“大事を始めるには、まず手近なことから始めよ”と教える中国の故事「隗より始めよ」。良い関係を築くには、まず一緒の食事から。達人たちのリアルな会食術を掘り下げる。

黒岩真治さんが「いつも新鮮な感動を得られる」と絶賛する「オー・ギャマン・ド・トキオ」の特等席はカウンター席。厨房を囲むように設えられているので、繊細な感性が息づくプレゼンテーションをつぶさに眺められる。「一流レストランは表も裏もエレガント。この店はまさにそうで、磨き込まれた厨房や、料理人の無駄のない動きは尊敬に値する。フレキシブルな対応にも大いに助けられています」(黒岩さん)
今月の”会”の達人

ポルシェジャパン 広報部長黒岩真治さん
慶應義塾大学卒業後、メルセデス・ベンツ日本、カッシーナ・イクスシー、FCAジャパンなどを経て現職。新車発表会などのイベントを取り仕切り、メディア関係者、本国のデザイナーをアテンドしながら、数多くの会食をこなしている。
国際人が経験則で導き出した海外ゲスト向け会食術とは?
海外から取引先が来日したら、どんな店にアテンドするだろうか。
すぐに閃くのは日本料理店かもしれない。だが、名立たる外資系企業でキャリアを築いてきたポルシェ ジャパンの黒岩真治さんの考えは一味違う。なんと、敢えて欧米人に馴染みのあるフレンチやイタリアンをチョイスするそうだ。
「日本独自の食文化である和食は確かに外国人を喜ばせるでしょうが、よほどの日本通でもなければ、店の違いまでは気づいてもらえないものです。でも、これが洋食となると、話は別。日本人は外国人より嗅覚が優れていると言われ、実際、一流の日本人シェフが作る料理は五感に訴えかけてきますが、これが欧米人にはことさら新鮮に映るようです。慣れ親しんでいる料理だからこそ、普段、口にしているものと比較することで、余計に感銘を受けるのかもしれません」
そう話す黒岩さんが信頼を寄せるのは、東京・恵比寿にある隠れ家的なレストラン「オー・ギャマン・ド・トキオ」。「ここでしか体験できない感動を提供すること」をモットーとする木下威征氏がオーナーシェフを務める一軒だ。
「以前、世界一美意識が高いと言っても過言ではないイタリアの自動車デザイナーを連れていったら、彼は今まで食べた料理の中で一番だと絶賛した。それほど木下シェフの料理は繊細で刺激的なのです」
“会”を成功に導くには
外国人と会食する際、”敢えて”洋食を選択する