いまやすっかりブームからジャンルに定着した、腕時計界の一大トレンド「ラグジュアリースポーツウォッチ(ラグスポ)」。入手困難な弩級モデルから、手の届くラグスポテイストモデルまでを1冊にまとめたバイヤーズガイド『ラグジュアリースポーツウォッチ大全』から、その中身をご紹介しよう。
マスター オブ コンプリケーションをラグジュアリースポーツで実現
FRANCK MULLER(フランク ミュラー)
ヴァンガード グラビティ スケルトン

【SPEC INFORMATION】
ケースサイズ:53.7×44mm ケース素材:18Kピンクゴールド ストラップ:クロコダイル×ラバー 巻き上げ:手巻き 搭載キャリバー:Cal.FM CS03 防水性能:3気圧 振動数:毎時1万8000振動 パワーリザーブ:約5日間
価格:3080万円

機構も価格も超弩級なラグスポ
複雑機構の腕時計を得意とすることから“マスター オブ コンプリケーション”と称された独立時計師フランク・ミュラー。そのスタートは1986年に製作した自身初となるトゥールビヨン機構搭載の腕時計であり、これをはじめとして、翌年にトゥールビヨン+ミニッツリピーター、’89年にはトゥールビヨン+ミニッツリピーター+パーペチュアルカレンダーといったグランドコンプリケーションを次々に発表。複雑機構の名手の称号を確立するとともに、機械式腕時計の復権に多大な貢献を果たした。
「ヴァンガード グラビティ スケルトン」は、従来のシステムを覆す斬新な発想により生まれたトゥールビヨンの進化形である。まず、文字盤6時位置にX型のブリッジを備え、その下に従来の2倍もの重さのY型トゥールビヨンケージを納めた。その内部で可動する心臓部のテンプは、ガンギ車が内側に切られた歯車のレール上に沿って回転。さらに1分間に1周するケージ内で、中心軸から外れたテンプが回転しながら空間を旋回する。まるで自転する惑星が太陽の周りを公転する天体の運行のような優雅な遊星運動で、限りなく重力に縛られない理想が追求されているのだ。
他のヴァンガードシリーズ同様、本作もストラップの取り付け位置を隠すことでケースとの一体化を実現。ラグのない大型の一体型ケースが、ダイナミックかつアヴァンギャルドなトノウ形状を際立てる。またスケルトンデザインでは、ムーブメントプレートを極限まで削り、必要最小限のフレームだけを残した。これにより約5日間パワーリザーブを誇るツインバレルも表側から見ることが可能に。内部機構だけでなく、デザインまでグラビティ=重力というテーマを追求し、繊細なコンプリケーションを“魅せる”モデルへと進化させた。