いまやすっかりブームからジャンルに定着した、腕時計界の一大トレンド「ラグジュアリースポーツウォッチ(ラグスポ)」。入手困難な弩級モデルから、手の届くラグスポテイストモデルまでを1冊にまとめたバイヤーズガイド『ラグジュアリースポーツウォッチ大全』から、その中身をご紹介しよう。
ドレスウォッチの名手によるスポーティデザインのコレクション
FRANCK MULLER(フランク ミュラー)
ヴァンガード

【SPEC INFORMATION】
ケースサイズ:53.7×44mm ケース素材:ステンレススティール ストラップ:クロコダイル×ラバー 巻き上げ:自動巻き 搭載キャリバー:Cal.FM 0800 防水性能: 3気圧 振動数:毎時2万8800振動 パワーリザーブ:約42時間
価格:148万5000円

抜群の存在感がある立体的モデル
フランク ミュラーを象徴するドレスウォッチコレクションといえば「トノウ カーベックス」。 1920〜30年代に流行したアール・デコ様式のヴィンテージ時計にインスピレーションを得て、“トノウ”と呼ばれる樽型の形状を、手首に装着しやすいように湾曲(=カーベックス)させたケースデザインが特徴である。このコレクションに限らず同社ではトノウ型を採用したモデルは数多いが、基本はすべて上品なドレッシータイプ。しかし、2014年に登場した「ヴァンガード」はこのスタイルを踏襲しつつも、従来のモデルとは一線を画した。
最大の特徴はそのフォルムにある。ベースデザインはトノウ カーベックスながら、ダイナミックでボリュームあるケースは存在感抜群で、モデル名の由来通り、アヴァンギャルド(=前衛)と呼ぶにふさわしく、まさにスポーティさあふれる外観となっている。
それは文字盤も同様で、お得意のアール・デコ調アラビア数字は中抜きして周囲を切り立たせ、極太スケルトン針を組み合わせた。また、文字盤のフランジ(見返し)にはコンパスを模した東西南北と方位角の意匠をセット。このフランジの方位表示は人生を航海になぞらえたフランク ミュラーのメッセージとなる。
さらに装備についても同じことがいえる。クロコダイルスキンにラバーを裏打ちしたストラップは、高級感をキープしながら、着け心地のよさと耐久性を実現。汗をかいてもへたらない仕様となり、厚みが増した見ためもダイナミックだ。そのストラップはケースに融合し、ラグのない一体型ケースがいっそうトノウ型のフォルムを際立たせている。
象徴的なトノウ カーベックスをベースに、従来とはまったく違うテイストを生み出したヴァンガード。これぞフランク ミュラー流のラグスポである。