「神の島」にたたずむ現代建築、今治市伊東豊雄建築ミュージアムとは?

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日本全国 アートと自然を愛でる癒やしの絶景美術館

心地よい空間や美しい景色のもと、思い思いにアートと向かい合う。美術館を訪ねる目的はさまざまだが、非日常感を味わいながら、心を癒やし、明日への活力をチャージする場所として美術館を楽しんでいるかたも多いことだろう。本特集では展示作品はもちろんのこと、そのロケーションや建物も一体となってアートを堪能でき、心癒やされる美術館を全国各地で探した。ご紹介する美術館は季節を問わず、いつ訪ねても、その時ならではの魅力がある。「いつか訪ねたい場所」として、まずはこちらでの美術館散歩をお楽しみあれ。

建築もアートな美術館へ

光が時を刻むしまなみが借景。神の島の現代建築

美術館のシンボルとなる建物そのものが、アートとして一見の価値あり、と注目されるスポットが増えている。地元で時を刻んできた建物が匠の手で再生されたり、新たにできた建築が地域に活気をもたらすきっかけとなったり……。全国各地、個性豊かな建築が話題の美術館へご案内しよう。


愛媛・今治
今治市伊東豊雄建築ミュージアム

光が時を刻むしまなみが借景。神の島の現代建築

シルバーハット
カマボコ形の屋根が連なる「シルバーハット」は、伊東さんが1985年度日本建築学会賞作品賞を受賞した昔の自邸を再生したもの。右奥に見えるのが展示棟の「スティールハット」。

世界を舞台に活躍する建築家、伊東豊雄さんの名を冠したミュージアムは、本州と四国を結ぶ瀬戸内しまなみ海道のほぼ中間地点、大三島(おおみしま)にある。人口約5000人の風光明媚な島は、日本総鎮守と称される大山祇(おおやまづみ)神社があることから「神の島」とも呼ばれ、美しい自然や伝統的な暮らしが守られてきた。

みかん畑脇の斜面に建つミュージアムは、伊東さん設計の2つのユニークな建築からなり、貴重な模型なども展示。刻々と表情を変える空と海、蝶の乱舞や鳥のさえずりも建築の魅力を引き立て、見学者の気分を盛り上げてくれる。

コートヤード(中庭)とリビングだった空間
伊東邸でコートヤード(中庭)とリビングだった空間では、ワークショップやコンサートが開催される。

(上)実際に使われていた椅子や机が展示されている(下右)湖のように静かな海と島影がつくるパノラマ(下左)多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)の1/20模型。
(上)子ども部屋だった場所には、家具デザイナーの大橋晃朗(おおはしてるあき)が伊東邸のために手がけ、実際に使われていた椅子や机が展示されている。(下右)湖のように静かな海と島影がつくるパノラマは、息をのむほどの美しさ。特に、伊東さんが惚れ込んだ夕暮れどきの眺めは格別だ。(下左)伊東さんが設計した多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)の1/20模型。眺めのいい場所に常設展示されている。

図書閲覧スペース
キッチンとして使われていた空間は現在、図書閲覧スペース。伊東さんが設計した初期の住宅から近年の大規模な建築まで、約155点の図面が保管されている。

美術館を拠点に町おこし「日本でいちばん住みたい島」へ

「建築教育の場や町づくりの拠点をつくりたい」という伊東豊雄さんの熱意が実を結び、「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」が開館したのは、2011年の夏。島の自然に癒やされながら、名建築を体感できる。

大三島に通ううち、都会にはない豊かさに魅せられていった伊東さんは、高齢化や人口減少といった問題を抱える島を、建築で活性化したいと思うように。「大三島を日本でいちばん住みたい島にする」という目標を掲げ、「伊東建築塾」のメンバーや地元の人たちと活動を開始する。

大山祇神社の参道に人々が集える店を開き、廃校になった小学校を改築してホテルにし、耕作放棄地をぶどう畑としてよみがえらせて島初のワイナリーをつくり……。そうした取り組みの成果は、若い移住者の増加といった形で少しずつ表れている。

ミュージアムへ行くときは、時間をたっぷりとって、大三島全体を楽しんでみてはいかがだろうか。

スティールハット
大小4つの多面体を組み合わせた「スティールハット」は、見る場所によって印象が一変する。見学希望者はまず、こちらで入館の手続きを行う。

「スティールハット」1階のサロン
「スティールハット」1階のサロン。被災地に贈る椅子の製作や島を紹介するパンフレット作りなど、愛媛県立今治北高等学校大三島分校の生徒たちが取り組んできたプロジェクトを写真で紹介している。
※こちらの写真は2019年度展覧会「聖地・大三島を護る=創る2019」の際のもの。現在とは異なる。

(上)「リラクゼーション・パーク・イン・トレビエハ」の模型(下)エントランスのロゴ
上・螺旋構造の展示物は、伊東さんが2001年に設計した「リラクゼーション・パーク・イン・トレビエハ」の模型。トレビエハはスペインのバレンシア地方にあるリゾート地。下・エントランスのロゴも洒落ている。

大三島産のワイン。右から島紅、島白、島みかん うんしゅうスパークリング、島ロゼ スパークリング
大三島産のワイン。右から、「島紅(しまんか)」「島白」「島みかん うんしゅうスパークリング(375ml)」「島ロゼ スパークリング」。「島みかん」以外各750ml。
※季節によって販売内容は異なる。

大三島みんなのワイナリー
ワインを購入できる「大三島みんなのワイナリー」(愛媛県今治市大三島町宮浦5562 TEL 0897-72-9377)

Profile
伊東豊雄さん(いとう・とよお)

伊東豊雄

1941年生まれ。主な作品に「せんだいメディアテーク」、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」、「台中国家歌劇院」(台湾)など。ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、プリツカー建築賞など受賞。2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。これからの建築を考える場としてさまざまな活動を行っている。写真/藤塚光政


今治市伊東豊雄建築ミュージアム

住所:愛媛県今治市大三島町浦戸2418
TEL:0897-74-7220
開館時間:9時~17時
休館日:月曜(祝日の場合は原則翌日振替)、12月27日~31日
料金:一般840円
● 10月3日から「大三島みんなの参道物語〜子どもたちが描く未来編〜」を開催予定(2025年9月12日まで)。

美術館の開館時間、休館日、展示期間、展示内容等は変更になる場合あり。お出かけ前に美術館の公式ホームページ等をご確認ください。

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