日本全国 アートと自然を愛でる癒やしの絶景美術館
心地よい空間や美しい景色のもと、思い思いにアートと向かい合う。美術館を訪ねる目的はさまざまだが、非日常感を味わいながら、心を癒やし、明日への活力をチャージする場所として美術館を楽しんでいるかたも多いことだろう。本特集では展示作品はもちろんのこと、そのロケーションや建物も一体となってアートを堪能でき、心癒やされる美術館を全国各地で探した。ご紹介する美術館は季節を問わず、いつ訪ねても、その時ならではの魅力がある。「いつか訪ねたい場所」として、まずはこちらでの美術館散歩をお楽しみあれ。
建築もアートな美術館へ

美術館のシンボルとなる建物そのものが、アートとして一見の価値あり、と注目されるスポットが増えている。地元で時を刻んできた建物が匠の手で再生されたり、新たにできた建築が地域に活気をもたらすきっかけとなったり……。全国各地、個性豊かな建築が話題の美術館へご案内しよう。
愛媛・今治
今治市伊東豊雄建築ミュージアム
光が時を刻むしまなみが借景。神の島の現代建築

世界を舞台に活躍する建築家、伊東豊雄さんの名を冠したミュージアムは、本州と四国を結ぶ瀬戸内しまなみ海道のほぼ中間地点、大三島(おおみしま)にある。人口約5000人の風光明媚な島は、日本総鎮守と称される大山祇(おおやまづみ)神社があることから「神の島」とも呼ばれ、美しい自然や伝統的な暮らしが守られてきた。
みかん畑脇の斜面に建つミュージアムは、伊東さん設計の2つのユニークな建築からなり、貴重な模型なども展示。刻々と表情を変える空と海、蝶の乱舞や鳥のさえずりも建築の魅力を引き立て、見学者の気分を盛り上げてくれる。



美術館を拠点に町おこし「日本でいちばん住みたい島」へ
「建築教育の場や町づくりの拠点をつくりたい」という伊東豊雄さんの熱意が実を結び、「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」が開館したのは、2011年の夏。島の自然に癒やされながら、名建築を体感できる。
大三島に通ううち、都会にはない豊かさに魅せられていった伊東さんは、高齢化や人口減少といった問題を抱える島を、建築で活性化したいと思うように。「大三島を日本でいちばん住みたい島にする」という目標を掲げ、「伊東建築塾」のメンバーや地元の人たちと活動を開始する。
大山祇神社の参道に人々が集える店を開き、廃校になった小学校を改築してホテルにし、耕作放棄地をぶどう畑としてよみがえらせて島初のワイナリーをつくり……。そうした取り組みの成果は、若い移住者の増加といった形で少しずつ表れている。
ミュージアムへ行くときは、時間をたっぷりとって、大三島全体を楽しんでみてはいかがだろうか。


※こちらの写真は2019年度展覧会「聖地・大三島を護る=創る2019」の際のもの。現在とは異なる。


※季節によって販売内容は異なる。

Profile
伊東豊雄さん(いとう・とよお)

1941年生まれ。主な作品に「せんだいメディアテーク」、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」、「台中国家歌劇院」(台湾)など。ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、プリツカー建築賞など受賞。2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。これからの建築を考える場としてさまざまな活動を行っている。写真/藤塚光政
今治市伊東豊雄建築ミュージアム
住所:愛媛県今治市大三島町浦戸2418
TEL:0897-74-7220
開館時間:9時~17時
休館日:月曜(祝日の場合は原則翌日振替)、12月27日~31日
料金:一般840円
● 10月3日から「大三島みんなの参道物語〜子どもたちが描く未来編〜」を開催予定(2025年9月12日まで)。
美術館の開館時間、休館日、展示期間、展示内容等は変更になる場合あり。お出かけ前に美術館の公式ホームページ等をご確認ください。
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[MEN’S EX Autumn 2024の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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