2022年に刊行された『世界一わかりやすい 腕時計のしくみ』の第2弾として、「複雑時計編」が発売となった。本書ではここ数年ブームが続いている複雑時計に絞って、その魅力的な機能や難解に動く「しくみ」を、とにかくわかりやすく解説。奥が深いさまざまな複雑機構のしくみをご紹介しよう。
ムーブメントの基本構造が異なる
クロノグラフの一体型と二層式
通常の時刻表示機能にストップウォッチ機能が組み合わさる。そんなクロノグラフの構造は、一体型と二層式とに大別できる。

クロノグラフムーブメントでは、長く時刻表示機能とストップウォッチ機能とが統合されていた。それが1969年、時刻表示用ムーブメントのダイヤル側にクロノグラフ機構のモジュールを重ねる二層式が登場。以降、伝統的な統合構造は一体型と呼ばれるようになった。二層式はモジュール式とも称する。
一体型は耐久性に優れ、また今では当たり前になったシースルーバックからの見栄えもいい。しかし開発も製造も難しく、高価になる。
一方二層式はモジュールだけを開発すれば済み、またベースムーブメントとモジュールとを個々に分解・修理できメンテナス性に優れる。だがシースルーバックからは機構は見えず、プッシュボタンとリューズが一直線状に並ばないことを嫌う時計ファンも存在し、一体型よりも格下に見られるケースが多い。