セミ複雑機構のしくみ⑥レトログラードとは?

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2022年に刊行された『世界一わかりやすい 腕時計のしくみ』の第2弾として、「複雑時計編」が発売となった。本書ではここ数年ブームが続いている複雑時計に絞って、その魅力的な機能や難解に動く「しくみ」を、とにかくわかりやすく解説。奥が深いさまざまな複雑機構のしくみをご紹介しよう。

見るだけで楽しくなる反復運動
RETROGRADE(レトログラード)

レトログラードは、アブラアン-ルイ・ブレゲが製作した懐中時計にもいくつか見られるほど長い歴史をもつ。初期には月や日付、曜日といった長いスパンの表示に使われ、腕時計の時代になってからは時・分・秒の各時間表示にも用いられるようになった。RETROGRADEは「逆行する」の意。この機構が動かす針は通常の円運動ではなく、円弧を描くように進み、終点に至ると起点へ逆行する。その動きはユニークで楽しい。

レトログラード
ヴァシュロン・コンスタンタンは、日付表示と曜日表示の2つに、レトログラード機構を与えた。各針は31日と日曜まで進むと、翌日には1日と月曜日の位置へと逆行する。

ヴァシュロン・コンスタンタンで学ぶ
レトログラードの読み方・使い方

円運動ではなく扇状に動く針が最終地点からフライバック

中に収めたゼンマイが巻き戻る力を利用して回転する香箱による駆動力は、歯車の回転で順に伝達される。ゆえに機械式時計の多くの表示は、針やディスクなどの回転(円)運動で示す。機械的に極めて理にかなった時計のしくみに、レトログラードは文字通り“逆行”する。

レトログラード機構のインデックスは、円の一部を切り取った円弧状に配され、針は扇状に進んで各数字や表記を順に指し示していく。そして針が終点に至り、その表示が済むと、瞬時に起点へと逆行し、新たなサイクルをスタートさせる。動きこそ奇抜だが、読み方や大半の調整方法は円運動表示の場合と同じだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン 「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」
「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」。バウハウスの原則のひとつである“Less is more”に通じるミニマルなダイヤルデザインの中で、日付と曜日、2つのレトログラード機構が際立つ。
裏蓋側からの見た目
レトログラードのモジュールはダイヤル側に載るので、裏蓋側からの見た目は通常の自動巻きと同じ。そのベースムーブメントは薄型設計で、入念な手仕上げがなされている。

2025

VOL.345

Spring

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