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液体表示のレトログラードに傾斜したセンタートゥールビヨン
異色の時計ブランドが生んだ唯一無二の超絶機構スタイル
2012年にスイス・ヌーシャテルで創設された時計ブランドのHYT。時計・医療・化学・物理学・宇宙工学のスペシャリストが集結し、クロノードやルノー・エ・パピといった最高峰の時計技術と最先端医療技術、NASA開発の宇宙工学技術を組み合わせ、10年の歳月をかけてファーストモデル「H1」を完成させた。その最大の特徴は液体によるレトログラード表示。この唯一無二の時表示スタイルはそのままに、2023年、同社初のトゥールビヨン「ブラック・エクリプス」を発表した。
新作も採用する液体レトログラード表示は、文字盤を囲む厚さ0.4mmのプレキシガラス製キャピラリー内を、2色の異なる液体が移動することにより実現する。6時位置からグリーンの液体が排出され、ゆっくりと1周しながら表面張力で保たれた透明な液体との境目で時表示。終点に達するとグリーンの液体が逆流(レトログラード)して戻り、ふたたび6時位置から再開する仕組みとなる。
これらを巧みに操るのが6時位置に備わる2個の可動式ベロー。NASAが開発した特殊合金製ポンプの1種で、ムーブメントが圧力をかけると一方から色付きの液体が押し出され、もう一方が透明な液体を吸い込む。この繰り返しによって液体レトログラード表示が実現するのだ。また、新作では機構内に独自のカムを採用したことで液体の流れがスムーズとなり、より精密な表示を成し遂げている。
そして、もうひとつの特徴がセンタートゥールビヨン。ドイツ人時計師のヴァルター・プレンデルが開発した傾斜バランストゥールビヨンに想を得て、ひげゼンマイ、ガンギ車、ケージのすべてに異なる傾斜を施した姿は圧巻である。その周りには3つの球体を配し、それらが惑星のように廻りめぐる様子も楽しい。2つの独創的超絶機構を1本に融合した奇跡のようなコンプリケーションだ。
この機構が凄い!
【Point 1】
グリーンの液体で示すレトログラード時表示HYTを象徴する液体レトログラード表示。グリーンの液体が6時位置のベローから注入され、キャピラリー(毛管)の中を通ってぐるりと1周。反対側の6時位置に達すると逆流して戻り、計時を再開する。グリーンと透明の2色の境界(写真は10時)が現在時刻だ。
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【Point 1】
グリーンの液体で示すレトログラード時表示
HYTを象徴する液体レトログラード表示。グリーンの液体が6時位置のベローから注入され、キャピラリー(毛管)の中を通ってぐるりと1周。反対側の6時位置に達すると逆流して戻り、計時を再開する。グリーンと透明の2色の境界(写真は10時)が現在時刻だ。
【Point 2】
液体レトログラードを司る2つの機械式ふいご液体レトログラード表示を司るのが可動式金属ベロー(ふいご)。グリーンの液体を注入するアクティブベロー(左)、透明な液体を格納するパッシブベロー(右)の2つが搭載され、機械式ムーブメントの圧力により液体が出し入れされることで時表示が実現する。
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【Point 2】
液体レトログラードを司る2つの機械式ふいご
液体レトログラード表示を司るのが可動式金属ベロー(ふいご)。グリーンの液体を注入するアクティブベロー(左)、透明な液体を格納するパッシブベロー(右)の2つが搭載され、機械式ムーブメントの圧力により液体が出し入れされることで時表示が実現する。
【Point 3】
傾斜をつけたセンタートゥールビヨン傾斜30度のバランススプリング(ひげゼンマイ)、15度のエスケープメントホイール(ガンギ車)、23度のケージを備えた異色のセンタートゥールビヨン。これはドイツの時計職人ヴァルター・プレンデルが開発した傾斜バランストゥールビヨンに想を得ている。
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【Point 3】
傾斜をつけたセンタートゥールビヨン
傾斜30度のバランススプリング(ひげゼンマイ)、15度のエスケープメントホイール(ガンギ車)、23度のケージを備えた異色のセンタートゥールビヨン。これはドイツの時計職人ヴァルター・プレンデルが開発した傾斜バランストゥールビヨンに想を得ている。
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※表示価格は本書発売時(2023年9月1日現在)の税込み価格です