街中からサーキットまで!「ポルシェ カイエン ターボ E-ハイブリッド」が“今だからこそ”の味わいを備えている訳

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クーペにだけ用意されたトップパフォーマー

ポルシェ カイエン ターボ E-ハイブリッド
先代ターボGTに代わる「GTパッケージ」はクーペのみにラインアップ。

スペイン・バルセロナで行われた国際試乗会のメインに用意されたのは、「カイエンターボE-ハイブリッド」だった。 “ターボ”とあるようにフラッグシップモデルという位置づけとなる。最高出力599ps、最大トルク800Nmの4リッターV8ツインターボエンジンにモーターを組み合わせ、パワーユニットの合計出力は“カイエン史上最高”の739ps、最大トルクは950Nm。0→100km/h加速3.7秒、最高速度は295km/hに達する。

パワーユニット
739ps/950Nmのシステム合計出力を誇るパワーユニットは、GTパッケージでも同仕様。

出発地点のホテルでクーペボディのターボE-ハイブリッドを受け取る。フル充電状態ではなかったため、出発時のメーター内には電動走行可能距離は66kmと表示されていた。電動走行モードであるE-POWERで走りだす。早朝の出発ということもあり、排気音や排気ガスを出さないのは後ろめたさがなくていい。大渋滞するバルセロナの市街地を電動走行でくぐり抜けて高速道路に入る。スペインの高速道路の制限速度は大半が100 km/h 、速い区間でも120km/hと日本と似た設定になっている。ターボE-ハイブリッドは約130km/hまでは電動走行可能なためエンジンが始動することはない。

しばらく高速道路を走行したのちナビゲーションにしたがって山間のワインディングロードに入った。車両重量は約2.5トンもある重いクルマのはずなのに、車重を感じさせない軽快なハンドリングでタイトなコーナーをクリアしていく。ホテルをスタートしてから59kmを走行した時点でようやくエンジンが始動した。掛け値なしでこれくらい走ってくれれば、多くの人の日常生活を電気自動車としてカバーすることも可能だろう。エンジンの動力を使ってバッテリーを充電するE-CHARGEモードもあるので、高速走行中に充電をして、市街地では電動走行するといった使い方もできる。

ナビゲーションの目的地は、バルセロナ郊外にあるサーキット、パルクモートル・カステリョリだった。全長4,140m、11コーナーがあり高低差は約50mもあるテクニカルなコースだ。ここではターボE-ハイブリッドクーペにのみ設定される「GTパッケージ」を試す。これは先代の「ターボGT」の代替となるモデル。実は新型にもターボGTは存在するのだが、日本の排ガス規制に適合せず、主に北米、中国で販売されるという。欧州、日本、香港、台湾、シンガポールなどでは、このGTパッケージがトップパフォーマンスモデルという位置づけとなるようだ。カーボンパーツを多用し、軽量バッテリーなどを採用することで、ベースモデル比マイナス100kgの軽量化を実現。車高は10mm低められている。これにより0→100km/h加速は3.6秒に短縮、最高速度は305km/hに到達する。

サーキットでは走行モードをスポーツプラスモードに切り替える。するとチタンマフラー内のフラップが開き、野太いV8サウンドが車内に響く。新型カイエンの開発者がモデルチェンジに際して注力したポイントの1つに新開発のシャシーをあげていたのだが、スポーツプラスからイメージするほどサスペンションはガチガチではなく、でもピッチやロールをしっかりと抑制しながら実にしなやかにコーナリングしていく。これは伸側と縮側を別々に調整してくれる2チャンバー、2バルブ技術を採用したアダプティブエアサスペンションによるものという。裏のストレートでは速度は200km/hを超える。そこからハードブレーキで下りのコーナーへと侵入していくのだが、GTパッケージはPCCB(セラミックコンポジットブレーキ)を標準装着しているだけあって、ブレーキペダルの踏力に応じてグッと車体を沈み込ませてきっちりと速度を抑え込んでくれる。普通の自動車メーカーなら、こんな起伏の激しいサーキットでSUVの試乗会をやることはないだろう。ポルシェがつくる以上はSUVであってもスポーツカーなのだ、という自信のあらわれなのだと感じた。

ポルシェ カイエン ターボ E-ハイブリッド ロゴ

ポルシェはいま2030年までに80%超の市販車を内燃機関から電気自動車へとスイッチしていく目標を掲げる。タイカンに続く電気自動車の第2弾は、2024年に発表予定の次期マカン。2025年にはこのカイエンも電気自動車バージョンが発表される予定だ。カイエン ターボ E-ハイブリッドは、市街地でのゼロエミッション走行から、サーキットでの最高速300km/hの世界まで、その振り幅の広さこそが魅力だ。過渡期ゆえのユニークな存在であり、いまだからこそ味わえるモデルと言えるかもしれない。

文=藤野太一 写真=ポルシェジャパン 編集=iconic

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