
東京駅丸の内の路上での靴磨きからキャリアをスタートし、靴磨き世界大会で優勝するまでに技術を磨いた、靴磨き職人の長谷川裕也さん。カウンター越しにお客様と対面し、靴について語り合いながら、目の前で靴を磨き上げていく新たな靴磨きスタイルを作り出した革命児だ。鏡面磨きで輝くほど美しく仕上がった靴は多くの人を感動させてきた。

長谷川さんが店主を務めるブリフトHでは、オリジナルのシューシャインクリームを開発しているが、日々の靴磨きの中で、長谷川さんの頭の中に、ふと浮かんだのが「靴をパレットに見立てて、好きな色に染め上げたら面白そう」というアイデアだった。そこでまず相談したのが、1917年創業の日本初の純国産絵具の開発に成功した月光荘画材店の日比康造さん。日本の絵画史を切り拓いてきた老舗画材店とのコラボレーション企画「絵を描くように靴を磨く」がスタートしたのだ。

せっかくオリジナルの色に染め上げるならば、既製の靴ではなく、まっさらな「ヌメ革」の状態の靴に色を載せてはどうか。長谷川さんと日比さんが声をかけたのが、浅草、ウィーンで10年間靴作りの修業を行い、今や宮内庁やハリウッド映画界にも靴を納めている靴職人の三澤則行さんだった。


実はこの三者には共通点がある。それぞれが「世界一」を獲っているという点だ。長谷川さんは2017年のロンドンで行われた第1回靴磨き世界大会で優勝。月光荘画材店は1971年「世界油絵具コンクール」で第一位を獲得している。そして、三澤さんは2022年の「グローバルフットウェアアワード」で総合優勝を果たしているのだ。