まるでFRのようなドライブフィールが味わえる

ドライブモードは、「Comfort」「Slippery」「Sport」「Sport+」そして個別で選択可能な「Individual」があり、ステアリングに備わる手元のダイヤルで切り替えが可能だ。Comfortでも十分にパワフルだ。操舵感はずっしりと手応えがあり、足回りはスポーツモデルらしく少し硬めだが、電子制御ダンパーの効果は絶大で、しっかりとダンピングがきいていて乗り心地は悪くない。Sportモードに切り替えると、もはや2リッターであることを完全に忘れさせるほどの猛烈な加速をみせる。トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを搭載した9速トランスミッションが、切れ味よくシフトアップしていく。そしてシフトダウン時にはリズムよく機能が働くオートブリッピングで、気分が一層盛り上がる。
駆動方式はフルタイム4WD。前後トルク配分は31:69とAMG独自の後輪重視型にチューニングされており、まるでFRのようなドライブフィールが味わえる。またリア・アクスルステアリング、いわゆる4WS機構を備えており、約100km/h以下ではリアホイールが最大約2.5度フロントホイールと逆位相することで回転半径を小さく取り回しやすく、高速域では最大約0.7度同位相することで走行安定性を高めている。
「メルセデスAMG C 43 4MATIC+」のディテールをチェック(画像3枚)
実は近年、自動車の騒音規制がより厳しくなってきている。このC43では、マフラー内に可変エグゾーストフラップを備え、走行モードに応じて音を切り替える仕組みをとっている。それに加えて、走行状況に応じてサウンドを増幅して車内のスピーカーから再生することで、車外音は抑えながらドライバーには気持ちのいいエグゾーストノートが届く機構も取り入れている。
自動車の電動化、デジタル化が進む中でそれらの技術を活用しながらも、アナログな内燃エンジン車の魅力を最大限に引き出している。いまだからできる、いまのうちに味わっておきたい一台だ。
文=藤野太一 写真=郡大二郎、メルセデス・ベンツ日本 編集=iconic