ムーブメントのしくみ
調速機(テンプ)のしくみとは?
テンプは、ムーブメントの動く速さを決める機械式時計の司令塔。振り子と同じく一定の周期で正確に振動し、歯車の動きを調速する。
[調速機の役割]


振り子のしくみを、小さくしたのがテンプだ。振り子でいう錘がテン輪、ひもがひげゼンマイ。バネ性をもつひげゼンマイの伸縮によりテン輪は一定周期で往復回転振動し、この周期で基本輪列と香箱の回転速度が決まる。ひげゼンマイの外側終端は、ひげ持ちで固定。その内側でひげゼンマイを挟むひげ棒の位置を緩急針を動かして変え、ひげゼンマイの有効長さを長くしたり短くすることでテン輪の振動の歩度(進みや遅れ)を調整できる。
調速機のしくみ
時を刻む速さを決める機械式時計の心臓部?
テンプは、複数回の振動で1秒をカウントする。正確に刻まれる振動のリズムは心臓にも似て、機械式時計の最も重要なパーツだ。
固有振動数で1秒を数える

機械式時計の秒針は、1秒の間に等間隔のステップを刻み、動いている。このステップ数は、1秒当たりのテンプの振動数で決まる。毎秒5~10振動が一般的で、毎秒8振動以上をハイビート、未満をロービートと呼ぶ。そしてこの数だけ振動したら1秒になるよう、歩度調整をする。

上図の時計には、記事中ごろの写真にあったひげゼンマイの有効長さを変える緩急針とひげ棒がない。代わりにテン輪に取り付けたネジを出し入れして歩度調整をするしくみで、これをフリースプラングと称する。フィギュアスケートのスピンで、手を広げるとゆっくり回り、閉じると速く回るのと同じ原理だ。
ひげゼンマイには、熱膨張しづらく磁気の影響を受けにくい特殊な合金が用いられる。また近年では半導体のように超精密成形ができ、磁気の影響を受けないシリコン(シリシウム=ケイ素)製のひげゼンマイを採用するブランドも多い。
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