既存の顧客へ向けた“新しい選択肢”

当日は“ビアンコイタリア”のエクステリアカラーをまとった走行可能なモデルが用意され、顧客たちが見守る中、特設のステージを滑り出てセンターに到着した。今回はそのアグレッシブにチューンされたというV12自然吸気エンジンのサウンドはほとんど聴くことはできなかったが、日本において実車が走行するシーンに初めて遭遇した瞬間であった。

やはりライバルと比較して5cm低いという全高を持ったプロポーションはきわめてインパクトがあり、その豊かな曲線美と共に、まがいなきフェラーリであることを印象づけた。そして、このホワイトのボディカラーもなかなか良い質感を表現している。スタイリッシュなアッパーボディとテクニカルな要素が織り込まれたブラック系のアンダーボディとのコンビネーションがより明確に目に飛び込んでくるのだ。フロント22インチ、リア23インチのタイヤが収まるホイールアーチには空力特性向上のためのフローティングシステム(特許所得)が採用され、こちらもブラックアウトされているので、ボディ全体がより”薄く”感じられる。プロサングエの走行シーンを眺めるなら、リアのホイールアーチの膨らみが実寸以上にアグレッシブに感じられ、エレガントでありながらも迫力十分だ。


そして4ドアでありながらも、リアドアの存在感を極力小さいものにするためのこだわりが随所に見られる。ウェルカムドアという観音開きスタイルのドアオープニングもユニークであるし、限られたホイールベースにおける良好な乗降性を確保するためでもある。

インテリアはドライバーだけでなく乗客全員が同じレベルで、エモーショナルなフェラーリのドライビング・プレジャーを楽しむことを目的として開発されたと語られている。ラグジュアリーとスポーティさがよいバランスで調和していると言えよう。そしてドライビング・ポジションもきわめて低く、フェラーリのスポーツモデルと同じマインドでステアリングを握ることができる。

エンジニアリング的に見れば、V12エンジンをフロントミッドにマウントしギアボックスをリアに置くトランスアクスルレイアウトを採用。さらに新開発のアクティブサスペンションを採用し、どんな状況下においてもエモーショナルなドライビングと快適性を両立しているというのがプロサングエの売りである。

このプロサングエは量販を目指したモデルではなく、基本的には既存顧客へ向けての新しい選択肢として開発された。であるから、その販売方法もフェラーリ限定モデル並みに優良顧客への先行受注が進められたのだ。それはこのカテゴリーにあるコンペティターたちの考え方とは一線を画している。

日本における販売価格は4670万円と発表され、ワールドワイドで提示された数字と比較するなら、かなりの戦略価格である。興味のある皆様は早くショールームを訪れた方がよいだろう。既にかなり長いウェイティング・リストが存在しているのだから。
文=越湖信一 写真=フェラーリ・ジャパン 編集=iconic