製品化途中のモニター製品も、自宅で使って徹底的に研究!
ダイソンの新商品を発売前に、自宅で試せるなんてなんとも羨ましい話だが、このパテル氏の話は、理想のサイクロン掃除機を求めて5127台の試供品を作り続けた創業者の精神が今も明確に生き続けている証。大勢の社員に実際に使わせて、そこから出た不満を解消することで『ベスト』の商品を生むのだ。そして最新作V15の完成品がパテル家に訪れた時の話を愉快そうに始めた。
「うちには10歳と5歳の二人の子供がいますが、これまでにも何度も試供品が提供されているせいか、最近では目が肥えてしまって、簡単に新作に感心することがありません(笑)。しかし今回のV15に関しては違いました。見た目や機能はそれほど変わりませんが、子供達の心をとらえたのは、吸引した“パーティクル”の数値が可視化されたこと。今では『見て僕は2000万』『私は2500万』と言い合って、ゲームを楽しむように競い合って掃除をしています」
ここでまず説明したいの“particle”(パーティクル)という言葉。直訳すると「粒子」となるが、ダイソンはこの言葉で塵や埃をはじめとする掃除の対象物を示す。

つまりこれも、目に見えないマイクロスコープの世界の異物までしっかりクリーンにすることを常日頃から意識している、ということだろう。
今回の主役製品である「Dyson V12 Detect Slim」はそうしたまさにミクロの世界のゴミをしっかりと除去し、しかも最新作は数千万単位の膨大な数までカウントしてしまうのだ。
「これも研究所でミクロの世界の研究を怠らない成果です」
そう語るのはシニア・サイエンティストのマフュー・リー氏。1991年ケンブリッジ生まれの30歳科学者だ。
「十分な資金を投資し続ければ、研究はどんどん進み、理解が深まります。けれどもどうして掃除機のメーカーが目に見えないパーティクルをそこまで研究するのかと、一般の人は訝しがるかも知れませんね。しかしそれもサイエンティストの立場から言わせてもらうと、研究を重ねれば重ねるほど新たな発見と学びが見つかり、無限と言ってもいいほどの広がりを見せるものなのです。こうして積み上げた研究が、新作のデザインに活用されて、ミクロの世界のパーティクルを除去するための決め手となり、ベストの掃除機を生み出します」
と、このリー氏の発言を聞いたところで、こうした飽くなき探究心の源には、今もジェームズ・ダイソン氏の“創業の精神”とでもいうべき情熱が脈々と流れていることが分かった。