ライバルを圧倒する速さとスポーティーな走り

今回の試乗車は、バッテリー容量78kWhで、フロントとリアアクスルそれぞれに計2基のモーターを搭載。最高出力408psで最大トルクは660Nm、一充電走行可能距離は485kmの「ツイン」というモデルだった。ちなみに3月にバッテリー容量69kWh、シングルモーターでフロント駆動のエントリーグレード「プラスシングルモーター」が追加されており、それを機にツインモーター仕様は「アルティメット ツインモーター」へと名称変更されている。
エクステリアでは、エンジン冷却の必要がないことからグリルのない顔つきがBEVの特徴となっている。これには空気抵抗の低減効果もあって、さらにルーフとテールゲートの2箇所にスポイラーを備えたことで、航続距離を最大4%延長している。

インテリアのデザインは基本的にはXC40をベースとしたもの。ただし、従来のモデルと大きな違いがあって本革を使用していない最初のボルボ車になるという。いま自動車各社はサステナブルな取り組みとして、内装への本革の使用量を減らし、リサイクル材を用いたりしているが、ボルボもいち早くその取り組みを行っている。

手縫いのステアリングの表皮も本革のように見えるが、合成素材が用いられている。実際に手で握ってみても言われなければそうとは気づかない。またスウェーデンのアビスコ国立公園の山々の地形図にインスパイアされた加飾パネルを用いるなど、しっかりとスカンジナビアンデザインが取り込まれている。
運転席まわりを見渡してもスタート/ストップボタンはない。ドライバーがキーをもっていれば、ドアを開け、運転席に座り、ブレーキを踏んでギアをシフトすれば走りだす。停止して、パーキングに入れてクルマを離れればシステムは自動的にシャットダウンする。何度か乗り降りを繰り返していたら、すぐに違和感はなくなった。
足元には電動車用に開発されたタイヤ、ピレリPゼロエレクトを装着していたが、20インチという大径サイズをしっかりと履きこなしており、乗り心地も良好だった。ボルボ車としては異例の前後異サイズのタイヤを装着し、前後重量バランス50:50ということもあってハンドリングもいい。回生ブレーキレベルはワンペダルのオンオフ切り替えが可能。オフであれば、アクセルペダルをオフにするとコースティングし、発進時にブレーキペダルから足をはなすとゆっくりと動き出すクリープが発生する。オンの場合、クリープは発生しないが、市街地では回生ブレーキが強くきくワンペダルのほうが走りやすい。
C40リチャージのディテールをチェック!(画像4枚)

競合車種は、メルセデス・ベンツのEQAやアウディ Q4e-tron、レクサス UXなどが想定されるが、他を圧倒するのはその速さ。0−100km/h加速4.7秒は、ちょっとしたスポーツカー並みのものだ。C40リチャージは、クリーンなスカンジナビアンデザインや上質なインテリアは従来のモデルと変わらず、電動化によってボルボの既成概念をくつがえすほどのスポーツ性能を兼ね備えていた。試乗を終えて、サブスクに申し込んでおけば良かったと思った。
文=藤野太一 写真=茂呂幸正、ボルボ・カー・ジャパン 編集=iconic