最も身近な複雑時計であり、デザイン性も高く、メカ好きからファッション好きまでを魅了するクロノグラフ。そんなクロノグラフ180本を紹介するバイヤーズガイド『超本格クロノグラフ大全』から、その中身をピックアップしてご紹介。
【注目のクロノグラフ】
ポルトギーゼ・クロノグラフ
IWC(アイ・ダブリュー・シー)

20年以上デザインを変えない傑作ロングセラークロノグラフ
IWCの数あるモデルのなかでも、とりわけエレガント系ではNo.1の人気を誇るポルトギーゼ。その歴史は1930年代にまで遡り、ポルトガル商人の要請によって開発が行われたことから“ポルトギーゼ”の名になったと伝えられている。初代が懐中時計の手巻きムーブを搭載したことで、ポルトギーゼは1939年の誕生時より当時としては異例の大型スタイルに。大型で頑丈、広々として見やすい文字盤は生まれながらのコンセプトだった。そして、その名がいちやく有名になったのは1990年代。’95年のラトラパンテを経て、’98年に「ポルトギーゼ・クロノグラフ」が登場したことによる。
オリジナルのコンセプトを受け継いだ、このポルトギーゼ・クロノグラフもまた、登場時からオーバー40mmの大型モデルだった。その一方では、クロノグラフはダイナミックで煩雑なスポーティデザインという’90年代の概念とは一線を画していた。ベゼルは非常に薄く設えられ、すっきり広々としたレイアウトの文字盤。そこに控えめな縦並びの2カウンターと繊細なアラビア数字やリーフ針のみを配し、余計な装飾性はいっさい排除。まるで余白を楽しむかのような余裕が感じられる。常識を覆すエレガントなデザインのこのクロノグラフは、たちまち大人のユーザーから圧倒的な支持を集めた。
現行のポルトギーゼ・クロノグラフでは、2019年より内部機構が自社製キャリバー69355に変更。高級仕様のコラムホイールを採用したこのムーブメントによって機能性がさらに向上した。また、文字盤のバリエーションも定番のシルバーやブラックに、ブルー、グリーン、レッドなど多彩なカラーが追加された。だが、そうしたマイナーチェンジはあっても、時計の外観は’98年からほぼ変わっていない。それは、デビューより流行に左右されない確立したデザインの証なのだ。
2019年末より変更された自社製キャリバーを搭載
2019年末の機種変更により、搭載ムーブメントが従来のCal.79350から自社製のCal.69355へ変更。従来同様に大型で、より高機能なムーブがシースルーバックを通して観賞できる。
