走りや室内空間、日本に合わせた仕様で不満も不安もない

現状はオンライン販売のみ。購入はオンラインのみで完結、ワンプライス販売で分かりやすくなっているという。また、試乗から購入、点検・整備まで1つのIDでワンストップに提供するカスタマーエクスペリエンスセンターも2022年夏に開業予定。

今回はアイオニック5に少し試乗することができた。クリーンでスクエアなデザインがとても目をひく。この10年ほどはアウディやランボルギーニを手掛けてきたVWグループ出身のデザイナーがヒョンデのデザインを統括しており、その影響がみてとれる。
ボディサイズは全長4635 mm×全高1645mmのコンパクトハッチバックながらも、全幅は1890 mmとワイドなだけあってボディ側面にはエッジがきいている。ホイールベースは3000mmとミッドサイズクラスを上回るもので、室内空間は後席もたっぷりと広い。
インテリアはホワイトを基調に、2つの大型スクリーンを組みあわせたセンターパネルの枠もグレーにすることでより明るい印象をうける。ウインカーレバーを日本向けにわざわざ右側に移設しているところからも本気度がうかがえる。シフトダイヤルもステアリングコラム右側に配置したことで、ドリンクホルダーやスマートフォンチャージャーが組み込まれたセンタコンソールは可動式で、これを前後させることで運転席と助手席間の移動がしやすくなるといった工夫がされている。そしてシートをリラクゼーションコンフォートというモードにすると、座面が一般的なシートではできない角度にせりあがり、レッグレストが出現する。これが思いのほか快適だった。ロングドライブに疲れたときや充電中の待ち時間などにもちょうどいい。

そしてユニークなのが、スポーツモードにしても疑似エンジン音が高まるような演出はないのだけれど、“自然の音”というモードがあって、「清やかな森」や「穏やかな波」、「雨の日」、「カフェテラス」といった音が選択可能なこと。個人的には「温かい暖炉」という音が気に入った。最近、YouTubeで焚き火の動画は流行っているというが、まさにそれだ。ちなみにオーディオシステムはBOSE製がインストールされていた。

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量はスタンダードモデルが58.0kWhで上位モデルが72.6kWh。モーターの最高出力は170psもしくは217psで駆動方式はRRの2輪駆動か、もしくは最高出力305psで4輪駆動のモデルがある。一充電走行距離(WLTCモード)は、スタンダードが498km、上位モデルが618km、4輪駆動で577kmと、現状販売されているBEVのなかでもかなりのロングレンジ性能を誇る。

充電性能も日本仕様向けに90kW級のCHAdeMO形式に対応する。さらに輸入車としては初めて車内、そして車外にもV2L(Vehicle to Load)機能を備えた。後部座席下にあるコンセントを使えば、PCなどの電子機器もバッテリー切れの心配なしに使えるし、車外のものはアウトドアなどにも役立つ。さらにV2H(Vehicle to Home)にも対応するというから、現状の輸入BEVのデメリットが見事に解消されている。

試乗車は4輪駆動の「IONIQ 5 Lounge AWD」だったが、300psを超えるだけにアクセルを軽く踏み込むだけで軽快に走り出す。前後サスペンションはマクファーソンストラット式&マルチリンク式で、タイヤもミシュランと共同開発したEV専用の「パイロットスポーツEV」を装着しており、乗り心地も20インチサイズとは思えないしなやかさだった。そして回生のレベルはパドルシフトを使って3段階で調整が可能。いわゆるワンペダル仕様も選べる。
これ以外にもADAS(先進運転支援システム)も満載。ウインカーを出せば、メーターモニター内にミラーに仕込まれたカメラによる後方画像を映し出し、自転車などの巻き込みを防止するような工夫も凝らされていた。

“ヒュンダイ”時代を知る人には、日本車よりも安かろう悪かろうなイメージをお持ちの方もいるかもしれないが、もはやそれは過去の話だ。いまや“ヒョンデ”は多くの部分で日本車にも勝るといっても差し支えないと思う。LGのテレビやらサムスンのスマートフォン(ギャラクシー)や、またBTSのようなK-POPや韓流ドラマなどがそうであるように。
アイオニック5の価格はベースが479万円~IONIQ 5 Lounge AWDが589万円。2022年5月からオーダーを受け付け、同年7月からデリバリー開始予定のため補助金の正式な額はまだ未定というが、かなり魅力的な価格設定であることは間違いない。