AZABU TAILOR(麻布テーラー)
“日本人の体型を熟知し胸周りの丸みを美しく”
――篠塚さん

「人気のサルトリア仕立ての3ピースは芯材の適度な使用による肩から胸周りにかけての美しいフォルムが自慢。オプションで仮縫い(+3万3000円)をつければさらに極上のフィットが得られ、よりパーソナルな着心地を実現します」(篠塚さん)。13万4750円〜〈オーダー価格〉(Y&Mプレスルーム)
AUXCA.(オーカ)
“日本独自のハレの装いをスーツで表現し面白い”
――橋本

「創業75年の老舗による新たなテーラード提案。“現代のハレ着”をイメージしているそうで、ノーステッチで線の美しさが生きるミニマルな型紙もどこか日本的。着物由来の機屋で織ったカシミア62%+シルク38%の生地もハレ着らしいですね」(橋本)。29万4800円(オーカ・サルーン)

橋本 かつてカチッと制服然としたものが多かった日本のスーツですが、アワードに選出されたスーツからはどれもいい意味で“味”を感じます。
篠塚 リングヂャケットのこのスーツも、既製品とは思えない色気と雰囲気がありますよね。
津田 このスーツは手縫い箇所が多く、殺し襟をはじめビスポークの手法を多用しているからでしょうね。
山浦 ここまで見事な殺し襟って既製じゃなかなか見かけません。確かに見栄えと着心地に直結している。
津田 既製じゃないから当然ですが、三越伊勢丹展開のリッドテーラーも、非常に趣味性が高い一着ですね。とくにパンツのパターンと縫製に唸りました。どこで縫ってるんですか?
山浦 東京・練馬のソーイング商会という工房です。腕のいい縫い手が高齢化している中、そこは若い職人が多く在籍。リッドテーラーの根本氏の型紙と繊細な手仕事が相まって最高の仕立て上がりと自負してます。
篠塚 試してみたくなりますね。麻布テーラーのオーダースーツも選択の自由度が高く、趣味性という意味では頑張ってるつもりですが(笑)。
山浦 3万3000円アップで仮縫いまでつけられるのは凄いですよね。あと前々から感じてたのですが、麻布さんは日本人に合う前肩設計はもちろん、胸周りの丸みが素晴らしい。
篠塚 はい。たとえジャージー素材でも前身頃には芯地を入れ、男性的な胸周りの演出にこだわっています。
橋本 皆さんのスーツとは少し趣が異なりますが、オーカも個性的で面白くないですか。
津田 日本的な引き算の美学を感じさせますよね。今らしいリラックス感もあり、好まれる方は多そうです。
山浦 これもまた日本のスーツの可能性を感じさせる一着ですね。

事前アンケートを元に、編集部がピックアップした本アワード受賞スーツのことをよく知る3名にお集まりいただき、生地にフォーカスした座談会を行った。
Profile
[中央左]リングヂャケットマイスター 206青山店 スタッフ兼プレス
津田京樹さん
国産スーツの最高峰であるリングヂャケットにて、青山店で店頭に立ちつつプレス業も兼任。既製服からオーダーフィッティングまで豊富な知識と経験を有する津田さん。
[中央右]日本橋三越本店 紳士服オーダーバイヤー
山浦勇樹さん
日本橋三越本店のメンズ部門のバイヤーにしてオーダー部門を統括する山浦さん。
[右]Y&Mコミュニケーションズ PRマネージャー
篠塚 剛さん
日本のメンズスーツに特化したアタッシュドプレス「Y&Mコミュニケーションズ」のPRマネージャーとして活躍する篠塚さん。
[左]編集部
橋本慎司
司会を担当した編集部・橋本。小誌では生地特集を手掛けることも。
[MEN’S EX Winter 2022の記事を再構成]
※表示価格は税込み