
ポルシェが作ったEVスポーツその実力とは?
前置きが長くなったけれども本題に移ろう。ではタイカンとはいったいどんなクルマなのか。カタチとしてはパナメーラとよく似た形状の4ドアサルーンで、つい先日にはシューティングブレーク(ワゴン)のクロスツーリスモも追加された。パナメーラのスポーツツーリスモよりSUV風味の強いグランドワゴンスタイルで、こちらがタイカンの本命とも言われている。いずれも4人乗りだ。
最大のポイントはBEV専用のアーキテクチャを採用したこと。つまり既存のモデルからエンジンを外して電気モーターとバッテリーを積んだBEVではないということだ。リチウムイオンバッテリーシステムは強力な800ボルトタイプで床下に配置された。グレードによって性能が変わる。ちなみに電気自動車におけるエンジンは電気モーターというよりもむしろバッテリーだ。モーター性能も大事だが、バッテリーの性能のほうがパフォーマンスにより大きく影響する。
タイカンには1個、もしくは2個の強力な電気モーターがリアもしくは前後のアクスルに備わっている。つまりリア駆動か4輪駆動かの用意がある。変速機はいずれも二段。最もベーシックなモデルがリア駆動のタイカンで408PS。そこから順に、4S(530PS)、ターボ(680PS)、ターボS(761PS)で、911あたりと同じようなグレード展開だ。電気自動車にターボ(=過給機)?と不思議に思われるかもしれない。もはやポルシェにおけるターボとは“凄い”という意味に一般化されている。
BEVのキモとなるバッテリーについても簡単に紹介しよう。タイカン用として79.2キロワットアワーのパフォーマンスバッテリーと、94.4キロワットアワーのパフォーマンスプラスバッテリーが用意された。ターボ以上にはプラス仕様が標準装備で、他にはオプションで搭載できる。普通充電で0から100%まで充電するのに要する時間は9〜10時間程度。また、高速道路などの急速充電器(50kw)を使えば半時間でおよそ100km走行分を充電することができる。なお、ポルシェではより高性能(150キロワットアワー)な充電ネットワーク“ターボチャージングステーション”を独自で計画しており、これを使えば半時間で航続可能距離のほぼ8割にあたる300km分の電気を充電することが可能だ。タイカンのハードとして概要を書いたがこれだけ知っていればまずは十分。残る興味は実際のドライブフィールがどんなものか、だろう。
その走り、実はパナメーラよりも911にずっと近いものだ。特にワインディングロードでは巨体をものともしない走りが刺激的。重心が低く、路面にへばりつくように走る。逆に街中ではパナメーラ以上に重厚で当然静か、乗り心地では勝るとも劣らない。高速走行での安定感などはまさにポルシェターボ級だ。そして何より低いノーズから盛り上がったグラマラスなフェンダーの峰を眺めながらのドライブは、実にポルシェらしくて気分も昂るのであった。
今月の1台 PORSCHE TAYCAN(画像5枚)
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文=西川 淳 写真=橋本 怜 構成=iconic
[MEN’S EX 2021年9月号DIGITAL Editionの記事を再構成]