
夢だった「空飛ぶクルマ」がタクシーに
自動車業界は今、パラダイムシフトを迎えようとしている。燃料を空気と混ぜて燃焼し駆動力を得る内燃式エンジンの搭載をやめ、排出ガスがゼロの電気でモーターを駆動する電気自動車の普及へ、一気に舵を切ろうとしている。なかには内燃式エンジンの廃止計画を、声高に唱える自動車メーカーも出てきているほど。
でも、このパラダイムシフト……。よくよく考えてみたら、子供の頃に思い描いたクルマの未来は電気自動車ではなかった。少なくとも、昭和生まれの筆者が子供の頃は、空飛ぶクルマに夢を馳せたものだ。
「空飛ぶクルマ」と言うと、水陸両用ならぬ空陸両用車のようなイメージが強いのではないだろうか。しかし、実際はドローン技術の発展もあって、人間が乗れるくらいの“大型ドローン”のほうが現実的なようだ。最大の理由は滑走路が必要ない、という点だろう。

2009年から大型ドローンの開発を進めているのがアメリカの「Joby Aviation」(ジョビー・アビエーション)だ。既にテストフライトは1000回を超え、2023年にはFAA(米連邦航空局)からコマーシャルフライトの許認可を取得、2024年には正式に運用開始を計画している。
筆者は大型ドローンと記しているが、正確には「eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing:電動垂直離着陸機)」と呼ばれているもの。短距離・多頻度運航用に設計され都市圏にて通勤者や出張者、旅行者によるオンデマンド利用が見込まれる空飛ぶタクシー市場のニーズに適している。実際、Joby Aviationが開発を進めているeVTOLの航続距離は150マイル以上、定員はパイロット1名を含めた5名、最高速度は200マイル、というシティコミューターだ。
発表されている計画では“空飛ぶタクシー”として、まずはロサンゼルス空港から周辺都市への移動に活用される。これを聞くだけで、様々な飛行場と都市部を結ぶ渋滞知らずの交通手段としての活用が容易に想像できる。いずれはライドシェア(UBERやLYFTなど)よりも1人当たりの利用料は抑えられる、とさえ目論んでいる。しかも出資社のひとつとしてUber(合計1億2500万ドル)が参加しているばかりか、ライドシェアにおけるアプリ技術を提供する、という。