
サーキット走行もこなせるスポーツ性能を併せ持つ
昨年、発売された量産型e–tronにしても、アウディ・ジャパンはRSモデルとともに富士スピードウェイで走行する機会を早速設けるなど、彼らがそのダイナミクスに深い自信をいだいているのは間違いない。ところが、公道で試乗してみると、e–tronはまったく異なる表情を見せたのである。
電気自動車だからe–tronが静かなのはいうまでもないことだが、とにかくサーキットを自在に走れることが信じられないくらい、その乗り心地は快適なのだ。4輪にエアサスペンションを装備していることもあって路面からの衝撃をふんわりと受け止めてくれるいっぽうで、高速道路を飛ばしてもボディがヨロヨロと揺れることなく、水平な姿勢をしっかりと保って力強く走り続けてくれる。
この快適な足回りのどこに、サーキット走行を楽々とこなす強靱さが潜んでいるのかと思わず訝しんでしまうほどである。しかも、モーターの緻密な制御という点でもe–tronは高く評価できる。
一般的なエンジンと違ってスムーズな回転フィーリングで知られる電気モーターだが、意外にも電流をオンオフしたり、回転方向を反転させるときにショックを起こしがちという弱点が存在する。
このため、巡航しているときに微妙にアクセルを踏んだり離したりすると、そのたびにコツン、コツンという軽いショックが生じるEVも存在するくらいなのだ。しかし、e–ronは実にスムーズな走りを示し、駆動系からの不快なショックが乗員に伝わることはまずない。それくらい完成度が高いのがe–tronの特徴なのである。
アウディの高い技術力を様々な部分から感じさせる
もうひとつe–tronでユニークなのが、EVならではの回生ブレーキを用いた自動速度コントロールである。
電気モーターは電流が流れれば駆動力を発生させられるが、電流を流さずに駆動軸を回転させると電気を発生する。つまり、発電機としても使えるわけだが、その際には駆動軸を回転させるのに、それ相応の力が必要、ということになる。
この力は、駆動力と反対向きに働くのでブレーキとして用いることができる。これをEVの世界では回生ブレーキと呼んでいるが、ブレーキとして役立ついっぽうで電気を発電(回収)できるという一石二鳥の役割を持っているのだ。
e–tronで回生ブレーキのモード切り替えをオートに設定しておくと、車載のセンサーが前を走る車両との距離を計測。必要に応じてこの回生ブレーキをほどよく利かせることで、ドライバーがブレーキを踏む手間を部分的に省いてくれるのである。
アウディはこうしたEVのノウハウをスポーティなe–tron GTや使いやすいサイズのSUVであるQ4 e–tronなどにも活用。カーボンニュートラルの実現に向けて幅広い選択肢を提供しようとしている。
今月の1台 AUDI e-tron(画像5枚)
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[MEN’S EX 2021年6月号DIGITAL Editionの記事を再構成]
(スタッフクレジットは本誌に記載)※表示価格は税込み