「ゴルフのコックピットは父。僕の心の師でした」(丸山さん)

丸山 恩師の愛を感じますね。いやあ、コーチだった父を思い出すなあ。
村田 ずっとお父様がコーチを?
丸山 亡くなるまで心の師でしたね。アメリカでコーチングを学んだ大学の同級生に、助言を求めることもありましたが、最終的に整備をしてもらいたいコックピットは父。優勝するときは決まって、父のアドバイスに従ったときでした。
村田 素敵なお父様ですね。
丸山 アメリカでプレーした9年間も、試合が終わればすぐ日本に国際電話。父はネットで試合を追いかけて、流れを把握した上で僕に助言してくれました。
村田 お父様の存在がプレッシャーになったことは?
丸山 全くありませんでしたね。怒られたことは一度もなかったし。父は頭が切れてヤンチャで、怒らせるとめっぽう怖い。地元でも恐れられていましたね。地元の不良達に対しても、「近所迷惑だ!」という具合でしたね。
村田 すごい!
丸山 僕が小学生の頃は、担任教師のやり方が気に入らないと校長先生に直談判。中学時代、僕を感情的に殴った先生に啖呵を切ったり。変わっていたけれど、僕には優しかった。
村田 きっと丸山さんだから、お父様の愛情を素直に受け取ることができたんでしょうね。
いつかあっと驚く試合を、まずはIBF王者ゴロフキンから
丸山 今後、ボクシングファンを増やすために、村田さんはどのようなことが必要だと思われますか?
村田 根っからのボクシングファンに響くような、あっと驚く試合をしたいですね。ライトなファンは、ビッグマッチでハプニングが起こったときなどは興味を持ってくれますが、その後はなかなか定着しづらいので。
丸山 あっと驚く試合とは、具体的にどんなものですか?
村田 カザフスタンのゲンナジー・ゴロフキン選手と、対戦してみたいですね。ミドル級で長らくトップに君臨するチャンピオンです。今はそれに向けて精進しているところです。
丸山 楽しみですね。ライトなファンについては、ゴルフにも通じるところがあります。最近はプロゴルファーの容姿や発言ばかり注目されがちですが。
村田 女性ゴルファーに顕著ですよね。
丸山 実力やプレーが評価されていないことが歯痒いですね。根っからのゴルフファンのために、ゴルフ本来の面白さを伝えていきたいところではあります。実は最近、ゴルフがすごく盛り上がっているんですよ。
村田 僕は全くゴルフをやりませんが、確かに感染リスクの少ないスポーツですものね。
丸山 練習場はいつも満杯ですし、このところ元気がなかったゴルフ場も盛り返している。長らく冬眠していたゴルフファンが続々姿を現してきて、とても嬉しく感じます。「ほら、あっちにもこっちにもいた!」と(笑)。日本の男子ゴルフ界には、石川 遼や松山英樹に続く新人も大勢控えていますしね。最近はPGAツアープロの平均値を軽く超えるような逸材も多いんです。
村田 ニュージェネレーションですね。
丸山 そう、ひと振りでみんなの度肝を抜くような選手がね。解説者として、東京五輪のゴルフ日本代表ヘッドコーチとしても、大いに期待している部分です。昨年、東京五輪が延期になりましたが、ロンドン五輪の金メダリストである村田さんは今、何を思いますか?
村田 「ニーバーの祈り」を思い出しますね。
丸山 その言葉、今すぐスマホで調べたい! でも、手元にないのでもどかしいですね(笑)。
村田 アメリカの神学者が述べたとされる短い言葉なんですが、「神よ、変えられるものについては、変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。変えられないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。そして、この二つを識別する知恵を与えたまえ」というもの。僕の好きな言葉なんです。
丸山 深いですね。
村田 東京五輪を目指す選手にとって、コロナ禍という現状は変えられないものなので受け入れるしかない。ただ、変えられるもの、つまり努力次第でなんとかなんとかなるものに関しては、勇気をもって変えるチャレンジをしていくべき。それが何か見極めることが、今は必要なのではと思います。
丸山 さすが、村田さん。僕の頭には、芦田愛菜ちゃんに並ぶ読書家としてインプットされました(笑)。

[MEN’S EX Spring/Summer 2021の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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