SUV的おおらかさをもつ快適な乗り味に激変

まずはフィーリングアップの立て役者であるサスペンションについて、ハイラックスにおける特殊な仕立て方について説明しておこう。ピックアップトラックのサスペンションは、タフを求めて、リアには乗用車で見られるコイル状ではなく、長細い板を湾曲させたタイプを何枚か重ねたリーフスプリングを採用し、さらに、荷物を積んだ状態に重きを置き、重量物積載にも対応できるようにと、硬めのバネを採用して車両安定に対してちょうどいい塩梅を提供している。
実用性を強く求められるハイラックスは積載機会も多く、ある程度ラフに使われることを想定した設計がされているため、サスペンションは硬め仕様が基本。新興国のような何でも積み込んでしまうスタイルでは対応範囲が広いと評価されるものの、国内のようにほとんどを空荷で走るハイラックスにとって特殊なシーンでは、バネレートの高さを感じさせる、つまりサスペンションが大きく動かない印象が強い。高速走行になるとかなりフラットな乗り心地とはなるが、突き上げ感数歩手前といったフィーリングに対して、日常域では快適とは言い難い面があった。
ところが、今回のマイナーチェンジでは、その乗り心地は日常(空荷状態)において、不満がないどころか、しなやかなフィーリングと表現できるほどのセッティングへと変更。サスペンションをある程度動かして快適性を作り上げながらも、必要以上には動かさずに積載にも対応できるようタフに仕立ててある。
その動きにはSUV的なおおらかさがあり、日常から高速域、さらにはワインディングまで快適性を感じ取れるものだ。こういったどちらにもいい顔をするような仕立てを行うと、その過渡域に曖昧さや緩さが出てくるものだが、最新型からはそれを感じ取れず、むしろ2つの性能がシームレスに繋げられたことに、ちょっとした感激を覚えたほど。
そして、それと同調するかのようにステアリングのフィールも激変。VFCと呼ばれるパワーステアリングオイルの流量を速度や操舵角によって制御するシステムの採用によって操舵にしっかり感が生まれており、先のサスペンションと相まって、ワインディングを愉しく走らせることができる。マイナーチェンジながら、ずいぶんと欲張った改良をしてきたな、そんな印象を受けた。
新たに採用されたオートLSD(Zグレードのみ)もトピック。このシステムは2WDモード、つまりFR状態の時に、スイッチ操作で任意に作動させることができるもの。マニュアルによるとすべりやすい路面や凹凸のある路面などで片方のタイヤが空転した場合に使用するようにと書かれている。
システム的にはいわゆるブレーキを用いた疑似LSDをベースに、エンジン制御まで行うトラクションコントロール機能を利用したもので、2WDモード時のエマージェンシー的なトラクションコントロール機能と捉えると理解しやすいかもしれない。ゆえに、ヘビーデューティ4WDであるハイラックスには不要では? と思えたのだが、実際に、オンにしてダートを走行してみたところ、グリップを失うようなシーンでは不要なスリップを防ぎ、車両を安定方向へと導いてくれる。
同時に、ハンドリングでの対処もしやすくなっている。悪路で、低速域での作動を前提としているとはいえ、操る愉しさもちゃんと織り込んでいたことに驚いた。そして、4WDモードにするとハンドリングに大きく影響するパートタイム4WDモデルゆえに、2WDモードでは少々不安だが4WDモードにするまでもない、そんな合間のシーンにおいての活躍が想像できた。