【在宅贅沢コーヒー3】開化堂カフェ
自分で焙煎も、老舗茶筒メーカーが手がける クラフトマンシップが生きたコーヒーと道具

「スーッ、ピタッ」。明治8年創業、日本で一番古い歴史を持つ、京都の手作り茶筒の店、「開化堂」。ここの茶筒を一度手にされた方なら、その素晴らしさを覚えているだろう。蓋を閉めるときに、滑らかに吸い込まれるように閉まる。作る際に特別な器具を使うわけではなく、ミクロン単位の緻密な職人技があってこその精度だ。
日本茶を淹れる文化が薄れつつある現代、「茶筒の様々な可能性を知ってほしい」と、コーヒー愛好家でもある6代目の八木隆裕氏が2016年にオープンしたのが、トータルでのコーヒーライフを楽しむ「Kaikado Cafe」。
茶葉を入れるだけではなく、コーヒー豆やキャンディの保存など、万能密閉容器として使え、経年による色の変化も楽しめ、目にも美しい茶筒が飾られている他、茶筒と同じ製法で作られた自家製のシュガーポットやクリーマーが使われているなど、店内には、八木氏のこだわりが細部まで感じられる。
店で使われるコーヒー豆は、焙煎士、そしてアーティストとしても知られる中川ワニ氏による「中川ワニ珈琲」のもので、「味わいがありつつもすっきりとしたコーヒーを」とイメージを伝えて作ってもらったオリジナルブレンド。重すぎす、和菓子との相性も良さそうだ。それだけではなく「器」を作る職人として、カップもコーヒーの味の印象に影響を与える大切な要素と考えた。そこで生まれたのが京都の伝統工芸を受け継ぐ若手グループ「GO ON」の仲間である朝日焼の16世、松林豊斎氏にオーダーした、カップ&ソーサーだ。手触りや大きさ、口当たりにもこだわった器はお店でも使われるだけでなく、オンラインでも販売中だ。こちらもセットで購入すれば「自宅でKaikado Cafe」な雰囲気を楽しめる。
さらに、数量限定ながら、非常に興味深いのがザルとガスコンロさえあればできる「手焙煎セット」。仕事の手を休め、無心になってコーヒーの香りに包まれるひと時は、きっと癒しの時間に。焙煎したての豆で淹れるコーヒーの味は格別だ。手焙煎やハンドドリップの方法が書かれた本とセットになっているので、生豆からドリップまでの工程を学べる。

様々な用途の茶筒も売っているが、特に一澤帆布製の袋に入った持ち運びのできる珈琲缶は魅力的だ。どれも、毎日全体を手のひらでなでると、その部分に綺麗な光沢が出てくるから、コーヒーと共に毎日を慈しむ脇役として、側においておきたい。昭和2年建築の市電事務所だった雰囲気抜群の建物は、クールでどこかノスタルジック。GO ONのメンバーで西陣織の「細尾」のカーテン、金網細工「金網つじ」製のドリッパーを使うなど、クラフトマンシップが詰まった世界観やクリエイティブな空気との出会いを楽しむべく、いつか訪れてみては?

Kaikado Café
http://www.kaikado-cafe.jp/
取材・⽂/仲山今日子
※表⽰価格は税抜き