本格眼鏡とは？ なぜ本格眼鏡が必要なのか？ どんなブランドがあるのか？ を一冊で網羅する『本格眼鏡大全』が発売に。1000本ものフレームが掲載された本書から、ここでは国内外の本格眼鏡ブランドをピックアップしてご紹介する。

CAZAL（カザール）

黒人アーティストのバイブル的存在

カザールはデザイナーのカリ・ツァローニ氏が1975年に創業したドイツのブランドだ。氏はオーストリアの名門ウィーン芸術アカデミーで建築を学び、家具や陶器などのデザインを手掛けた後に、眼鏡のデザインに携わる。これをきっかけに、自らの名前から編み出した造語、「CAZAL」をブランド名とした。

カザールのアイウェアはドイツの伝統的な眼鏡職人の技をベースに作られる。平面を基本とした当時の眼鏡に、建築物のような複雑な造形を取り入れ、機能一辺倒だったテンプルを美しく飾った。強烈なインパクトを放つアイウェアは、’80年代にマイケル・ジャクソンやMCハマーといった黒人アーティストがこぞって愛用した。全米で爆発的にヒットし、黒人たちの間でカザールを掛けることがステイタスとなったのだ。

2000年代以降はカザールのヴィンテージフレームが再び注目を浴び、10万円以上のプレミアム価格で取り引きされたことも。それを受け、’04年には過去の伝説的モデルを復刻した「カザールレジェンズ」が誕生した。そして’12年、惜しまれながらもカリ・ツァローニ氏が他界。翌年には追悼モデルが発表された。

大ぶりのレンズシェイプやデコラティブなテンプルの装飾など、眼鏡デザイン史に多大な影響を与え、近年のクラシック回帰の起爆剤となったカザール。カリ・ツァローニ氏の思想やデザイン哲学は次の世代に受け継がれており、いまも世界中のセレブやアーティストに熱狂的な支持を得ているのだ。

創業者
カリ・ツァローニ

創業者兼デザイナー。ドイツの「バウハウス」デザインに影響を受け、建築物のような造形や大胆な装飾をアイウェアに取り入れる。眼鏡デザイン史に多大な影響を与えた巨匠。