御し易いが甘過ぎない独特のグルーヴ感

同じ日にもう1台のR-デザイン、ボルボのベストセラー・モデルであるXC60に新たに加わった「B6」パワートレインにも試乗した。


B5の250ps・350Nmに対し、B6は300ps・420Nmと、出力もトルクもきっちり2割増しの48V MHEVだ。アイシン製8速ATが組み合わされる点も同じだが、V60 B5が前輪駆動だったのに対し、こちらXC60 B6はAWDとなる。

フロントグリルや窓枠、バンパー内のクローム使いを抑えてブラックとしたミニマルな外装と、チャコールグレーとアルミニウムという色彩&質感コントラストのスポーティな内装テーマは、V60 B5 R-デザインと同じだ。

他にもV60に共通する点は、オプション設定となるバウワース&ウィルキンスのオーディオシステムが、スピーカー素材を従来のケブラーからコンティニュアム・コーンに変えたこと。元より得意としてきたクリア・サウンドに艶やかな表現力が加わり、音響の選択肢にジャズクラブモードが新たに加わった。これまでの同オーディオシステムにも、ボルボの地元イエテボリの音楽ホールの音響を再現するモードは搭載されていたが、よりカジュアルな選択肢で「ホーム」感覚をさらに強調してくる発想が、面白い。
とはいえXC60 B6 R-デザインの実車を前にすると、まず目を見張らされるのは21インチという巨大なホイールだ。さらに走り出して驚くのは、大径ホイール&超扁平タイヤが、乗り心地を全く損ねていない事実だ。このよく動く滑らかな足回りは、ワインディングを走らせると躍動感でもって応じてくれる。ミズスマシのような俊敏さというより、しなやかな姿勢変化で曲がっていくタイプだ。

足回りからステアリングに伝わってくる感触の剛性感が高く、次第に4.7m近いSUVであることを忘れてしまう。それほどドライビングに没頭させてくれる、独特のグルーヴ感がある。その下支えとなるのは、AWDゆえの濡れた路面でも加速トラクションが安定していること。パワーとトルクでは優るのに、FFのV60より一枚上手と感じさせる手並みなのだ。
1940kgという車重と1915mmという車幅は決して小さくないが、車を戻す頃にはすっかり手の内に収まっていると感じられた。それでもイージーさとか安楽さより、スパイスのようにピリッとした印象の方が強く刻まれる一台。MHEV化によって新しくなったR-デザインの乗り味は、一度味わってみるべき絶妙のサジ加減といえる。
文/南陽一浩 写真/河野敦樹 編集/iconic