
モダン好みならV60はあえてのR-デザイン
雰囲気は柔和ながらも、いざ乗ってみると包み込まれるような乗り心地と、しなやかな剛性感によって、自動車の世界で北欧プレミアムを確立しつつあるボルボ。2020年夏にはラインナップの全モデルにPHEV(プラグインハイブリッド)や48V MHEV(マイルドハイブリッド)が揃い、電動化が着々と進んでいることを宣言した。
CO2削減そしてその先のカーボンニュートラル社会という課題に向かって、足元の車種展開でサステナブルに取り組むという明確な方向性を、ボルボは早くから示してきた。だが教条的な窮屈さで進めるのではなく、エクスペリエンスやプレジャーの質を巧みに高める布石を打てるところが、北欧の賢者たるゆえんでもある。

日本に上陸したばかりの2021年モデルの中では、とくにスポーティグレードの「R-デザイン」に新機軸がある。まず昔からボルボが得意とするステーションワゴン、現行V60は2021年型から初めてR-デザインをラインナップに迎えた。これはV60がマイナーチェンジして、スタンダードなエンジンを48V「B5」に一本化したがため。
B5は2リッターターボのガソリンエンジンと8速ATという従来のパワーユニット構成をベースに、ISGM(一体型スターター・ジェネレーター・モーター)とリチウムイオンバッテリーを組み合わせた48V MHEV。すでにV60インスクリプションに先行搭載されていたが、今回はR-デザインということで専用の内外装トリムの他にスポーツサスペンションが採用されている。

結果からいえば、これが想像以上に違いを生み出している。静的質感の上でも、通常グレードより車高が低く見え、迫力がある。ルーフレールなど通常グレードではクローム使いのパーツがブラック化されたことも大きいが、全体的にスポーティなだけでなく、モダンでミニマルな雰囲気に仕上がっている。
いざ走り出すと、MHEVの電気モーターによるアシストは、ドイツ車辺りは縁の下の力持ち的に黒子化する傾向だが、逆にボルボは積極的に静音走行させる。スポーティに走らせると電気モーターはレスポンス志向のアシストとなるので、峠道でも加速へ移る瞬間から驚くほど軽快だ。バイ・ワイヤのブレーキや回生の感触も自然で、足回りの味つけもほどよくロールを抑えつつ、渋みがない。

これまでR-デザインといえば街乗りでやや固さを感じる乗り心地だったが、新しいV60では微低速域での乗り心地や動的質感が飛躍的に上がっている。チャコールのレザーやアルミニウムパネルの対比がきいたインテリアといい、モダン好みならV60はあえてR-デザインを選ぶのが正解と思わせるほどだ。