
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」の秋冬バージョンがスタート! 「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第24弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.24 /GOLDEN BEARのスタジャン

1983年頃に購入しました。私が大学生の頃、スタジャンの一大ブームが起きました。当時はアメリカブランドのものだけでなく、DCブランドでもスタジャンを展開し、街中はスタジャンを着た人だらけと言っても過言でないほどスタジャンを着た人であふれていました。
当時のスタジャンは大きく分けて3つのタイプがありました。ひとつは身頃がメルトンで袖がレザーのオーソドックスなアメリカブランドのもの、もうひとつはそのアメリカブランドのスタジャンの身頃や袖にレタードを入れクラブのユニフォームのようにアレンジやカスタマイズしたもの、そしてアメリカのスタジャンを模してブランドロゴをレタード風に入れたDCブランドのものがありました。
特にDCブランドはスタジャンを展開していないブランドはないと言ってよいほどで、値段も当時で5万円以上するものも多く、自分の中ではメンズはMEN’S BIGI、ウィメンズはPINK HOUSEを着た大人たちが多かった印象が今でも強く残っています。
当時セレクトショップに通い始めていた自分にとって、スタジャンは持っていなくてはならないアイテムでした。なにを買おうか考えたとき、テイスト的にも値段的にもDCブランドのものは選択肢になく、アメリカブランドのものに絞り探し始めました。
様々なショップで試着してみたり、街中で着ている人のものをチェックしたりして、最終的に絞り込まれたのが当時渋谷のバックドロップで展開していたアメリカのBUTWIN(バトウィン)とセレクトショップで多く扱われていたGOLDEN BEAR(ゴールデン ベア)でした。
バトウィンは着丈が短めで身幅と袖が太いのに対して、ゴールデン ベアは着丈が少し長く身幅と袖もバトウィンより少し細めというバランスでした。
当時の流れから考えるとバトウィンの方がバランスが良かったのですが、ゴールデン ベアより値段が高く、バックドロップでチームオーダーを積極的に展開していたこともあり、大学のクラブやサークルのユニフォーム的にレタードを付けて着ている人が圧倒的に多かったのが迷うポイントでした。
クラブにもサークルにも入ってなく、田舎から出てきた貧乏学生にとっては、ここですでに選択肢はゴールデン ベアに絞られます(苦笑)。そこからさらに一番安く買えるのはどこかというリサーチをして、結果的にアメ横のヤヨイで渋谷界隈のショップより3000円程度安く買えたのを今でも覚えています。
購入してからはとにかくヘビーローテーションで着ました。ネルシャツやシャンブレーのワークシャツ、スエットシャツ、パンツはリーバイスの501やチノパン、足元はスタンスミスと、当時流行っていたアメカジスタイルの直球勝負でした(笑)。
途中レタードを買って自分で付けてみたり、ピンバッジを買って付けてみたり色々アレンジしてみましたが、結局なにも付けない素の状態に戻して数年間本当によく着ました。
その2年後BEAMSでアルバイトを始めると、このスタジャンを着ることもほとんどなくなります。きっかけは、渋カジのはしりのような高校生達がお揃いのスタジャンを着るようになり、なんとなく子供っぽく感じるようになったからです。
それ以降、いつかまた着ることもあるかなと思い、30年以上保管してきましたが、着ることはありませんでした(笑)。
それでも’80年代に大流行し、私の大学生時代のアメカジスタイルの代表的なアイテムなので、今後も着ることはないと思いますが、アーカイブとして大切に保管していこうと思っています。