今求められるのは進化が止まらない【機能派生地】

クラシック人気が継続する一方で、スポーティさを強めた機能素材の人気が並行する昨今のリアルなスーツ事情。ここでは、そんな時代性を鑑みつつ、しかしあくまでドレス然と装うことを前提とした、上質さとのバランスに秀でた生地を紹介する。ひとくちに機能といっても、アプローチは様々。季節毎に明確に気候が変化する日本においては、これらを使い分けることが、これからの時代のウェルドレッサーたる条件なのかも知れない。
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着心地だけじゃない、エコへの高い意識も備える次世代ファブリック


2020SSにローンチした最新コレクション。旭化成開発の環境に優しいストレッチ糸ロイカV550を採用し、高いフィット感と抗シワ性を備えた高機能ストレッチウールを完成。天然繊維であるウールに拘るなど早くからサスティナビリティに取り組んできたレダらしい視点も。上左はスーパー110’sホップサック。クラシック感と伸縮性のある快適性を両立。ジャケット各5万6000円/エストネーション(エストネーション)上中はリサイクル糸を使用。上右は2wayストレッチ。
REDA FLEXO / レダ フレクソ
【レダ フレクソ】

1865年、世界屈指の毛織物産地であるイタリア・ビエラで創業。’90年代には最新鋭の紡績機を一斉導入するなど技術革新への積極性を誇り、レダ アクティブ然りREDA FLEXO然り、時代に即した生地を多く生み出す。

優れたストレッチ性を備えながら、新世代サスティナブルストレッチファイバーを使用することで環境への負荷の軽減に成功した。
機能を加えた国産天然素材で現代のニーズを満たす


メルボ紳士服工業と御幸毛織が共同開発。カスタムとクラシックスの 2コレクションで展開する。ナチュラルストレッチや防シワ性に加えて、強撚糸にナノ加工を施すことで、ウール100%等の天然素材にこだわりながら高い撥水性を実現した。毛織物の名産地、尾州産に加え優れた実用性を備えている。スリーピーススーツ6万6000円/麻布テーラー(Y&Mプレスルーム)
WORLD TRAVELER / ワールド トラベラー
【カスタム】

1918年に羅紗商の平野屋羅紗店として創業した現メルボグループ。小売業として新ビジネスモデルを構築し、現在は羅紗事業にも注力。御幸毛織は1905年創業の国内の実力派。

糸の段階で施すナノレベルの加工で撥水・撥油性を付与。製織後加工で起こる薬品による目詰まりが起きないのが利点。
ブレンドにより可能性を広げる今後さらに期待度高まるコレクション

世界を超音速で旅するビジネスマンに向けた、多機能生地を揃える。2019年にローンチした同コレクションの特徴は、ストレッチ性や抗シワ性を備えながら、天然素材を使っている点。2021年SSには、ウールにリネンやシルクをブレンドした生地を追加、さらに幅広い表現を可能としている。さらに、環境に配慮したエコ撥水処理技術も投入されるなど、その進化は著しい。伝統と革新のバランスに優れた、まさに現代の紳士におすすめしたい生地だ。
VITALE BARBERIS CANONICO / ヴィターレ・バルベリス・カノニコ
【スーパーソニック】

創業1663年、現在も創業者一族の13代目が経営する老舗。完全な一貫生産で、オーダースーツは勿論、多くのブランドに生地を提供している。


ナチュラルストレッチに加えて、強撚糸を用いることで高い通気性も備えている。ビジネスの現実に即した、万能生地だ。
ただ伸びれば良いわけじゃない 見映えを意識した伸び加減


比較的オーセンティックな色柄とあって、一見、機能的な印象は受けない。しかし、横方向と斜め方向へのストレッチ性を有しており、またストレッチ素材であるポリウレタンを2%もブレンドすることで、かなりの伸びを誇る。質感の高い風合いと、長時間の移動での着用も苦にならない快適性を両立してくれる。オーダースーツ22万1000円/シゲアキ ナオイ(伊勢丹新宿店)
TOLLEGNO 1900 / トレーニョ 1900
【3Dウール】

1900年、ビエラで創業。テーラーだけでなく、いわゆるラグジュアリーブランドへの生地提供にも力を入れているとあって、見映えのする生地作りに定評がある。自社ブランドも展開。

全方向ではなく横方向と斜め方向に伸びを限定することで、ストレッチ生地にありがちなヨレ感を回避できる。
日々着用するものだからケアにおける使い勝手も考慮


ウールにポリエステルとポリウレタンをブレンドすることで、ストレッチ性と抗シワ性、さらに耐久性も獲得。ポリエステルが48%と高比率なので、自宅での手洗い洗濯が可能となった。デニム調とあって、ビジネスだけでなく休日使いにも重宝。それでいて価格は手頃。ジャケット4万3000円、パンツ2万1000円/エストネーション(エストネーション)
NISHIKAWA KEORI / 西川毛織
【エストネーション・エクスクルーシブ】
1929年に愛知県で創業。優れた機能を備えるウールの可能性を追求し、フォーマルからカジュアルまで様々な生地を提供する。国内での生産は尾州が中心。職人の技術継承にも尽力。


表情豊かな色みは、オンオフ共に重宝。それだけに、自宅での手洗い洗濯が可能なことは、実にうれしい。
この化学的アプローチこそ生地開発における最先端

高温多湿ゆえに汗に含まれる細菌が繁殖しやすい日本において、抗ウイルス&抗菌生地は実に頼りになる。薬品会社が開発した「バイラル オフ」加工により、繊維に付着したインフルエンザA型、SARSコロナウイルス等が99%減少。元々シャツ地として開発されたウールトロピカル&ウォッシャブルのタッチ96に使用することで、軽快にして清潔なスーツ生地が完成した。
MARZOTTO / マルゾット
【タッチ96】

1836年に設立。’50年代には衣料品生産もスタート。世界中の多様な服飾メーカーへの生地供給を行い、ベーシックなものからトレンド性の高いものまで、幅広いニーズに対応する。

細菌繁殖を防止すると臭いの発生も抑制。洗濯頻度が減らせて、スーツが長持ちする。水洗い洗濯に対する耐久性も高い。
まだまだある…[ウール生地]

ツイル
一般に縦糸の生地目が斜めの稜線を描く、綾織り生地を指す。ギャバジンで知られるように、耐久性に優れる。

ツイード
厳密には手紡績した糸を使い、縦糸2本、横糸2本で綾織りしたものが王道となる。スコットランドなどの特産。

バラシア
切れ切れの短い畝が表面に現れる梳毛生地。さらりとした風合いは季節を問わず、ゆえにフォーマルなどで重宝。

モヘア
アンゴラ山羊の毛で、繊維が太く長いのが特徴。ハリコシと艶があり、吸湿性に優れるので夏生地によく使われる。

ウールシルク
シルクをブレンドすることで、美しい光沢とよりしなやかな生地感に。強度を増すためにウール糸に巻く場合も。
知っておくべき生地の基本 [素材の種類]
コットンの基本性能
- 吸湿性が高い
- 比較的価格が手頃
- ケアがしやすい
コットンの主な生地

ツイル
チノクロスなどで知られる綾織り生地。春夏スーツにおける定番で、スポーティさとドレス感を両立出来る。

デニム
縦糸にインディゴ染め糸、横糸に晒し糸を使い綾織りにしたもの。労働着が出自だが、近年はドレスでも定番に。

コーデュロイ
縦方向に畝のあるベルベット織物。別名コール天。秋冬における定番生地で、畝の太さを表す単位はWALE(ウェル)。
※表示価格は税抜き
[MEN’S EX 2020年10月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)