おもてなしは朝摘みの野花で清々しさを添えて
中村孝則さんの住まい兼オフィスには茶室が併設され、稽古や茶会で頻繁に来客がある。だからおもてなしの花は欠かせないが、花屋で買うもの以外に、自ら摘んだ季節の野花を飾るのが中村さんの流儀だ。取材時も芙フヨウ蓉や宗ソウタンムクゲ旦木槿、柘ザクロ榴の花などがセンス良く部屋を彩っていた。
「近くに代々木公園、その先には明治神宮とこのあたりは都内でも緑が豊かなところ。そこを毎朝40分くらいかけて早足で巡るのが20年来の習慣で、野花は途中の道端などで摘んでいます。意識して探すとこんな都心でもいろいろな花が見つかり、楽しいんですよね」
意外にも中村さんは生け花を本格的に習った経験はなく、生け方は我流。花器もよく見れば茶道で使われる建水やグラッパの空き瓶などだ。
「色数を絞ったり、器とのバランスに気をつけたりしていますが、基本的には適当(笑)。無造作にそこらの器に投げ入れるだけで様になるものですよ」
たとえ一輪でも、朝摘んだ野花があれば部屋全体が清々しい雰囲気となり、自分の気持ちも整うと中村さん。
「最近自宅でテレワークが多いという人にこそおすすめです。リモート会議の際にも画面の隅に花があれば、会話の糸口にもなるでしょう」




コラムニスト
中村孝則さん

1964年生まれ。服飾、食、酒、シガーなど嗜好品をテーマに幅広い分野で活躍し、『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)など著書多数。「世界ベストレストラン50」の日本評議委員長。
[MEN’S EX2020年10月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)