
加藤 先ほどから「若い社員」という言葉が出ていますが、有能な若手を見抜くポイントなどはあるんでしょうか?
藤倉 これは若手に限らず、人へのパッションがあるかどうかですね。私たちはアーティストと仕事をしているので、「こんないい本がありました」「こんなことに最近感動しました」といったことを社員がアーティストに提案できて、そこから作品が生まれるようなプロセス、または姿勢が必要だと思っています。
加藤 確かに私自身も番組をやっていて、その場に熱量があると視聴率につながっていくことが多いように感じます。ちなみにアーティストも同じようにパッションがある人が売れますか?
藤倉 そこは難しくて、もちろん熱量も大事なんですけど、それ以上に人に共感してもらえるストーリーがあることが大切だと思います。たとえ楽譜が読めず、完璧ではなくとも、多くの人々の心を動かす歌声とか、そこに気持ち良さがあることが必要かなと。もしくは米津玄師さんのような詞も曲も絵もすごいみたいな天才か、またはたった一人が心から陶酔してすごいと思えるアーティストか。ちなみに私は社長になる前、社内の邦楽レーベルを統括していたんですが、「妄想三原則」というのを作って「東京ドームでのライブ、紅白歌合戦での歌唱、ミリオンセールスのどれかひとつでも妄想できるアーティストがいたら契約しよう」と。GReeeeNやback numberもアーティストへの強い思いと妄想からスタートしています。
加藤 妄想三原則! とても説得力がありますね。
藤倉 ただ、それだけだとあまりに美談になってしまうのでデータも見ますが、だからといってApple MusicやSpotifyやAmazonの動きを参考にアーティストと契約をして彼らが売れるかというと、そんなことはないと思うんですよ。
加藤 熱量の方がデータを超えるんじゃないですか?
藤倉 おっしゃる通りで、青くさいかもしれませんが、想いの方が勝つと思ってやっています。

グローバル最大手の強みを生かしたビジネス展開
世界最大の音楽企業ユニバーサル ミュージックグループの日本法人、ユニバーサルミュージック合同会社。邦楽、洋楽、クラシック、ジャズなど幅広い音楽ジャンルの作品を一般ユーザー向け、クライアント企業の販促向けに提供しているほか、アーティストやアスリートのマネージメントも手掛ける。主な所属アーティストはテイラー・スウィフト、ジャスティン・ビーバー、ザ・ビートルズ、King & Prince、椎名林檎など。
後編に続く
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[MEN’S EX 2020年10月号の記事を再構成]
撮影/柏田テツヲ スタイリング/後藤仁子 ヘアメイク/久保フユミ 文/岡田有加(81)