草刈正雄さん、初のエッセイ『ありがとう! 僕の役者人生を語ろう』。芸能生活50年をありのままに語る。

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『真田丸』で再ブレイク、役者冥利につきる名セリフ

そして『真田丸』ですね。

真田と聞いて、自分の中で何やら期するものがありました。以前、同じNHKの「新大型時代劇」という枠で放送された『真田太平記』というドラマに、僕は真田幸村役で出演したことがありました。『真田丸』での堺雅人さんの役ですね。

そして今度は、『真田太平記』では丹波哲郎さんが演じていた幸村の父親・昌幸の役。ましてや、三谷さんの脚本です。いくつか決まっていた舞台はありましたが、どうしてもやりたいと思いました。三谷さんが『君となら』の楽屋を訪ねてくださり、直々にオファーしてくださったのも嬉しかったですね。

三谷さんの作品は、台本から教えられることがいっぱいあります。型通りの戦国武将像と違うとても人間味のある昌幸像に、皆さんも魅力を感じられたのではないでしょうか。この役は、これまでの役者人生で、間違いなく「代表作」と言えるものになったと自負しています。

まさに役者人生における再ブレイクですね。

思ってもいなかったことです。挫折を何度も味わいながら、なんとかこの世界で生きてこられた。それだけでも十分ありがたいと思っていましたが、まさに60歳を過ぎて再びこのようなことが待ち受けているとは、夢にも思いませんでした。

昨年はまた忘れられない作品に巡り合いましたね。

NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』ですね。主人公の「おじいさん」役と聞いて、少し衝撃を受けましたが、僕も考えてみればそれなりの歳です。聞けば主人公の人生に大きな影響を与える役柄でしたので、とてもやりがいがあると感じました。

何より嬉しかったのが、演出陣に『真田丸』のときと同じ面々がいたこと。ご覧になった方はご存じかと思いますが、とにかく台詞がいいんです。脚本家の大森寿美男さんは、胸に残る台詞をたくさん書いてくださいました。

今こうして思い出して呟こうとするだけでも、もう涙が溢れてきてしまいます。大森さんの台詞を口にするたび、役者冥利に尽きるなあと、僕自身が一番感動していたのではないかと思います。『真田丸』とはまったく違う世界を広げることができた、そんな満足感も得ることができました。

P120

2025

VOL.345

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