草刈正雄さん、初のエッセイ『ありがとう! 僕の役者人生を語ろう』。芸能生活50年をありのままに語る。

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大きな転機となった舞台出演、そして運命の出会い

そんな時にまた思わぬ「出会い」に恵まれた。

女優の若尾文子さんに舞台への出演を勧められました。初めて舞台に立ったのは1984年の『ドラキュラ その愛』でした。お芝居の勉強を何もしていなかった僕です。舞台に立つのは本当に怖かったのですが、いざ始まるとこれが楽しかった。毎日、違うお客様の前で、生でお芝居をすることの醍醐味が、回を重ねるごとにわかってきました。

30代そして40代は舞台が仕事の中心になっていった。

当時はバブル期でもありましたから、あちらこちらで華やかな作品が上演されている。そんな時代でしたね。舞台は長期間にわたって関わるので正直苦痛なときもあります。でも、こちらは一度、どん底を見た身ですから、いただいた仕事を謙虚に一つひとつ大事に演じていこうという気持ちでした。テレビの仕事でもその気持ちは同じ。愚直にそれを日々重ねていく。 年間1~2本の舞台をやりながら、テレビではいただく役を真摯に演じる。このペース、このポジションを維持できれば「なんの不満もない」というのが、40代後半から50代にかけての僕の偽らざる心境でしたね。

そうした中で、三谷幸喜さんとの運命の出会いが。

2014年の『君となら』ですね。主演に竹内結子さん、その妹役にイモトアヤコさん、私は主人公の父親役で下町の理髪店の親父。すでに2本舞台出演が決まっていましたし、三谷さんの作品は覚える台詞の量も半端ではない……そう思うと無理だと思いました。けれども、台本を読んでみたところ、これがもう面白くて仕方ない。最高に面白い。

以前、あの角野卓造さんが演じた役ですよね。

そうなんです。角野さんなら下町の理髪店の親父はぴったりですよね。安心なキャスティングだと思います。それを僕にやらせようという、三谷さんの感性が僕はすごく好きなんですね。やる気を刺激されたことを思い出します。三谷さんはそうしたギャップを楽しんでおられるように僕には見える。この舞台に参加させていただいたことが、またひとつ僕にとっての大きな転機になりました。

2025

VOL.345

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