イザナギのレーダーを地上でキャッチできるか?
さて、私が測定を見に行ったのは真夜中、2時30分に衛星がやってくるときでした。31分ごろに水平面に現れ、約10分くらいかけて通り過ぎていきます。その中で今回、レーダーのパワー測定ができるのは約1分ほど。 衛星が現れる40分くらい前に機材をオフィスから運びだします。

しばらく歩いて現場に到着。ある広い公園で測定したのですが、当然ながら周りには誰もいない、真っ暗な状況。遠くで車が時折走っている音が聞こえるけれど、夜の公園はしーんとして静まりかえっています。(だれもいない野外。三密と真逆ですね) いつも測定している担当のエンジニアはてきぱきと機材を組み立て、PCを設置していきます。

レーダーをキャッチするアンテナのようなものはオリジナルのハンドメイド。細かい角度が大切なので、しっかりと方角と角度を測って設置します。(方角も角度もスマホのアプリを使っていて、こんな時にも重宝するんだ、と思いました)

正確な時刻を知るためにGPS時計も設置し、準備完了。管制室ともつないで、状況を確認しつつ、あとはひたすら衛星のやってくる時刻まで待ちます。

じっと待ちます。

「イザナギ、AOSです。(Acquisition of Signalの略でパスの始まりだそうです)」 管制室からコンタクトがありました。あちらでは、反応があってイザナギをキャッチしたようです。 さて、あと数分。上空にきて、この設置したアンテナでレーダーを測定し始めたら、PC画面の受信レベルの数字が5から10くらいにあがるそうです。(え?それだけ?5から10。地味といえば、地味ですが、でもこれが証!)
測定の結果と、今後のこと
ドキドキと見つめます。 と、そこで、 「あ、衛星の姿勢が今回、ずれているようです」 と管制室から連絡が入りました。コマンドにずれがあって、衛星の姿勢が思ったほうに向いていなかったようです。 ん???となると? 担当者「ということは、今回はレーダーをキャッチできなさそうですね」 その言葉通り、そこから数分間、画面はぴくとも変わらず、「イザナギ、LOSです。(Loss of Signalでパスが終わったこと)」と管制室から連絡が入りました。 担当者「今回はダメでしたね。」 そういって、担当者は来るときと変わらずたんたんとパソコンに結果を打ち込み、機材を片付けに。 今回はだめだったんですが、これを何百回と繰り返して、データを解析して、そして成功率を上げてきているんだそうです。正直、キャッチできたところを見てみたかったですが、こういった試験の連続、積み重ねが新しいサービスを生み出すんだなとより分かり、しみじみ各方面に感謝した夜でした。

今は1号機の運用と2号機の開発をメインで行っていますが、3号機以降は衛星の大量生産を行って、どんどん打ち上げていきます。現在の衛星はオーダーメイドで部品も削り出しで作っているのですが、大量生産となるとやり方がまた変わってきます。(家電をイメージしました) 年末には2号機の打ち上げもあり、そして3号機以降の生産もスピードアップが求められます。生活が新しい様式に変わっていく日々の中、こちらも今まで以上に早いスピードで開発が進みますので、また状況をお伝えさせていただきます!
最後までお読みいただきありがとうございます(つづく)
関連リンク:株式会社 QPS研究所
文/有吉由妃(QPS研究所) 写真/QPS研究所