
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを連載形式で紹介する新連載「中村アーカイブ」がスタート! 「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第12弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.12 /「ボウリング アランデル」のシャツ

1990年代前半頃に購入したシャツです。今でこそBEAMS Fで展開しているシャツはイタリアブランドのものが大半ですが、’80年~’90年代半ばくらいまでは英国ブランドをメインに展開していました。
私がBEAMSに入社した当時は、後にロイヤルワラントを授かるSTEPHENS BROTHERS(スティーブン ブラザーズ)を展開しており、その後ロンドンのジャーミンストリートの有名店のシャツを手掛けるTHE JERMYN STREET SHIRTS MAKERS(ザ ジャーミン ストリート シャツ メーカーズ)やHAINES&BONNER(ヘインズ&ボナー)、ALEXANDER RADCLIFF(アレキサンダー ラドクリフ)、PETER&MAGEE(ピーター&マギー)など、英国調がトレンドだったこともあり、数々の英国のシャツメーカーをバイイングしていました。
このBOWRING ARUNDEL(ボウリング アランデル)もその一つで、元々はロンドンのサヴィル ロウでショップを構えるビスポークシャツメーカーでしたが、その後NEW&LINGWOOD(ニュー&リングウッド)の傘下となり、現在もロンドンのジャーミンストリートにショップを構えています。
数年間数々のシャツをオーダーしましたが、一番気に入っていたのが、当時の英国の雰囲気を色濃く感じさせるこの大柄のヘリンボーンのシャツ。襟は英国らしい小ぶりのセミワイド、カフスは当時英国のシャツで人気のあったダブルカフスで、明らかにイタリアのシャツとは趣の違うシャツです。当時はサキソニーやフランネルのスーツにジャガードのネクタイと、まさにブリティッシュな装いでコーディネートしていました。
今見ても古臭さをまったく感じさせないシャツですが、イタリアのシャツでは表現できない雰囲気と、今の英国ではほとんど見かけなくなってしまった生地なので、数枚となってしまった他の英国のシャツメーカーのアーカイブとともに、これからも大切に残していこうと思っています。そして、いつかまたこんな雰囲気の英国製のシャツを展開できればと思っています。