
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを連載形式で紹介する新連載「中村アーカイブ」がスタート! 「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第9弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.9 /ジョン コンフォートのアスコットタイ

今回は、BEAMSに入社した1985年に購入したアスコットタイを紹介します。アスコット自体はトラディショナルな定番アイテムで、祖父や父親が良くしていたこともあり、子供の頃から見慣れたアイテムでした。中学生の頃から読み始めたファッション誌の影響もあり、中学生の頃にいきがって父親のクローゼットにあったアスコットタイを勝手に引っ張り出し、ボタンダウンのシャツに合わせて巻いたのが私のアスコットタイ歴の始まりです。
その後高校生になると、ブレザーにボタンダウンにアスコットタイという、当時のアメリカントラッドの王道みたいなスタイルに憧れて、父親のアスコットタイを借りて巻いていましたが、さすがに童顔の高校生だった私にはちょっと背伸びをしている感は否めず、今になって思うと、似合っていたかと言えば微妙な感じではあります(笑)。
大学生になると、トラッドなスタイルから遠ざかっていたこともあり、アスコットタイをすることもなくなりましたが、大学3年生の頃に某雑誌で見たフレンチアイビーの特集で、フランス人がアスコットタイやスカーフをシャツだけでなく、ポロシャツにも巻いているのを見て、そのセンスの良さに思わず感動してしまいました。
大学4年の9月にアルバイトとしてBEAMSに入社すると、先輩たちがフランス人のように、アスコットタイやスカーフを色々なコーディネートに取り入れているのを見て、スカーフは新人には難易度が高かったのですが、アスコットタイは中学生の頃から馴染みがあったので、少ない洋服のバリエーションに合わせやすいネイビーにホワイトのドットのアスコットタイを購入しました。
昨今ネッカチーフが注目され、久しぶりにメンズの巻物が注目されていますが、自分にとってネクタイ以外で男のネックアクセサリーと言えばアスコットタイなのです。今はクラシックなにおいが強すぎて、自然な感じでコーディネートに取り入れるのは難しく感じますが、もう少し歳をとったら、また自然な感じで巻けるかなと思っています。
その後何枚もアスコットタイやスカーフを購入しましたが、このジョン コンフォートのアスコットタイは、自分のお金で買った初めてのアスコットタイなので特別な思い入れがあり、今でも大切にクローゼットに保管しています。