日本初の小型SAR衛星! 宇宙と交信する毎日とは?【宇宙ベンチャー連載#003】

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ドキドキの初交信。衛星が産声をあげたそのとき私たちは?

さて、だいぶ脱線しましたが、初交信へと時を戻します。(ぺこぱ風)

ロケットから放出されたイザナギは、地球を5周した後に日本上空に来ることになっていました。その交信できる期間をパス、とよびます。計算された初パス開始の時刻は2019年12月12日5時30分。

ただ、この時間のパスは、イザナギは水平線近くを通ることになっていたので、角度が低く、アンテナから見えにくい位置でもあるので、もしかして交信できないかもしれない、とも事前に言われていました。この初パスでうまくいかなければ、次のタイミングは90分後。

朝の5時にはコントロールセンター(管制室、とも呼んでいます)の前に集まりました。テレビ局の依頼で「初交信の様子を撮影して送ってほしい」と言われていたので、私もビデオを持って待ち構えます。

ちなみに、コントロールセンターの場所は秘匿情報です。また、宇宙基本法(衛星リモートセンシング法)により、このコントロールセンターの中に入れるのも内閣府より承認を受けた人のみです。重要なデータを扱う場所になるので、ものすごく厳重に守られています。運用チームのみしか入れないので、私は入り口の扉についている小さな窓から撮影します。(内閣府に確認して、それはOKもらえました!)

5時過ぎにはチームはセンターの中へ。私もビデオを持ってドキドキドキ。。。

運用チームには事前に「初交信が成功したら、分かるようなリアクションをしてほしいな〜」とリクエストを出したりもしていたりして、とにかく、その刻を待ちます。

5時30分。
始まった!
チームみんながずっと画面を見つめます。

QPS研究所
初交信するときの様子です。センターにはいくつものモニターがあるのですが、それぞれ意味があり、衛星からのデータなどを映し出すものなんだそうです。


カタカタカタとパソコンを打つ音が。

無事にロケットで打ち上がって、宇宙に行って、、、でもこれで衛星と交信できなければ、何の意味もありません。交信できさえすれば、いろんな貴重な情報、知見を得ることができます。できなければ十数億円がパー。(イヤな言い方)

ある衛星のことを書いた本に「打ち上げまでなんの問題もなかった衛星ほど打ち上がった後に問題が起きるというジンクスがある」と書いてあったしな。。。

ほんの数分にいろんなことを思い出し、ビデオを持つ手も震えます。

遅いな。
なんの反応もないな。。

そう、運用チームはモニターを見つめたり、パソコンを打ったりするんですが、みんなの顔に何の変化もないんです。(視力2.0の私は見逃しません)これは、このパスでは初交信できなかったかな。。

そのうち、一人が何かを言い始めて、後ろにいたスタッフがボードに書き始めます。

ん? 何か動きがあったのかな。
でも、喜んでいるそぶりもなにもなく。ダメだったかな。。

そして、5時40分が過ぎ。イザナギが日本上空から去っていく時がきました。

しばらくして、チームみんなが立って扉のほうへやってきて、出てきます。

みんな真顔です。

「ど、どうでした? 今回はだめでしたか?」

担当者「いえ、交信できました」

「??? え??? あ、そうなんですね?」

担当者「すみません、10分しかないので、色々コマンド(衛星への指示だし)を送るのに必死で喜ぶ時間もなかったです」

「・・・・よ、よかったです!!!!」

担当者「とりあえず、喜びましょう。ばんざーい(真顔で手をあげる)」

みんな「ばんざーい(真顔)」

これが初交信成功後のやりとりでした!

思えば、すごく緊張の連続の10分だったわけですし、交信できる時間が10分しかない、その間にやらなければいけないことはたくさんあり、それを逃したら、次は90分後って、やっぱりすごく大変なわけで、リアクションとる暇なんてないですよね。

しかし、その後、集まったみんなで、「すごくない!? よかった! 初パスで成功したよ!」と笑顔になり、じわじわと喜びが。成功の実感がわいてきました。これこそすごくリアルな現場だな、と思いました。

実際にイザナギの産声を確認できたのは、5時35分08秒。そのときの感動的な場面が写真に残っています。

QPS研究所
右の画面に少し反応が見られます。心拍数みたいなもの!? と思ったのですが、それとはまた違う見方らしいですが、でも、これが衛星をキャッチできた証。

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