2リッター直4ターボ積む、AMGの入門モデル
というわけで、今回のお相手はメルセデスAMG A35 4MATICである。「35」というモデル名数字はAMGモデルとして初めて採用される(ちなみに過去に存在した最小の数字は「32」)。従来からあったAクラス用といえばA45 4MATICで、そちらはそちらで過激に進化しているから、これまた買う側にとっては悩ましい選択肢が増えてしまったというわけだ。
もっとも、A45はといえばエンジンそのものはもちろんのこと、搭載方法からしてA35とはまるで違う高性能グレード。少々高くてもいいからメルセデスAMG の真の実力をAクラスで試したいという方には、迷わずA45をチョイスして欲しいと思う。これからA35の美点をいくつか報告するけれども、だからといってA35を買ったあとにA45の方が凄かったじゃないか、と根に持たれても困ってしまうので(笑)。ちなみにA35とA45の価格差は基準グレード同士で比較すると約160万円。この差をどう考えるか。

実際、日本の公道で乗る分において160万円もの差を感じる場面はめったにないと思う。なにせ、306ps&400Nmというエンジンスペックだから、A35でも十分に速い。0→100km/h加速も4.7秒。ちょっとしたスポーツカーならカモれる。
大型クーペのようなグランツーリズモぶりまで発揮
A35 4MATICの魅力を簡潔にまとめると『コンパクトハッチバックであるAクラスとしての実用性の高さとホットハッチとしてのスポーツ性の高さを高次元でバランスさせた優秀なロードカー』となる。
そもそもAクラスはスタンダード仕様であってもデザインはかなりスポーティで、多種多様なブランドが出揃う激戦のコンパクトハッチバック市場にあって特に若々しい印象を放つモデルだ。ローンチ記念のエディション1ともなればさらにルーフスポイラーやフロントカナードなど走りへの期待を高めるアイテムが奢られており、乗り込む前から気分は否が応でも盛り上がる。コクピットに滑り込めばスポーティなシートやダッシュボードの演出がドライバーの気持ちをいっそう掻き立てる。
盛り上がったドライバーの気分に応えたのは強力な[M260]ユニットだった。7速AMGスピードシフトDCTと組み合わされた2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンは非常に扱いやすく街中では頼もしい従順さをみせるし、いざとなればスポーツカーのように車体を引っ張ってみせる。さらにパッケージオプションの「AMG RIDECONTROLサスペンション」を装備することで、よりいっそう幅広いシチュエーションに見合うドライブフィールを得ることができるから、このオプションは必須だと思う。

試しにワインディングロードを[S]および[S+]のモードを使ってめいっぱい楽しんでみたところ、鋭い瞬発力と常にしっかりと手応えあるステアリングフィール、そして追従性に優れたリアアクスルの動きが乗り手の心を大いに踊らせた。目を三角にして攻めてみても十分期待に応えてくれるほど高いポテンシャルの持ち主ではあるけれども、むしろドライバー自身の運転モードを七分くらいに抑えて操ってみたところ、これがまたたまらないほど気分爽快なクルージングが体験できる。この懐の深さ、余裕のドライバビリティこそA35 4MATICがバランスよく仕立てられていることの証拠だと言っていい。
さらに気に入ったのは、高速道路でのクルージングだった。全長4.5mに満たないコンパクトなハッチバックスタイルであるにも関わらず、まるで大型クーペのようなグランツーリズモぶりで驚く。
街乗りから長距離ドライブを快適にこなすという点では、A45よりA35が優っている。サーキットやクローズドロードでドライブを楽しみたいのなら断然A45だが、そこまで本当に必要な人は少数だろう。性能と実利をとってA35をチョイス。オトナの選択だと思うがどうか。
文/西川 純 写真/郡 大二郎 編集/iconic