新型になって醍醐味の走りはどうなった?

そして肝心なのは、FF化によって走行性能はどうなったのかということだ。試乗した「118iプレイ」は、Mスポーツ系のスポーティなサスペンションではなく、タイヤサイズも16インチともっともベーシックな足回りモデルだった。
パワートレインは最高出力140ps、最大トルク220Nmを発揮する1.5リッター直列3気筒ターボエンジンに7速DCTを組み合わせている。そしてBMWらしいのは、リアサスペンションに、グレードを問わずマルチリンク方式を採用していること。ちなみに先述のVWゴルフもAクラスもベースグレードは、トーションビーム式だ。この違いが乗り心地の良さにきいている。
また、日本のBMWでは初となる「ARB」という新機能を搭載している。これはコントロールユニットが従来の3倍の速さでスリップ状況を検知し、FFのデメリットであるアンダーステアを抑制するというものだが、言われなければそれとは分からないほど自然な制御で、箱根のワインディングを気持ちよく曲がっていくのが印象的だった。

ハイパフォーマンスグレードの「M135i xDrive」にも乗ったが、最高出力306ps、最大トルク450Nmを発揮する2リッター直列4気筒ターボに8速AT を組み合わせ、4輪を駆動するこのモデルは、とにかく速い。速いがしかし、コンフォートモードでは穏やかで意外なほど乗り心地がよい。かつては速いハッチバックのことを“ホットハッチ” などと呼んでいたが、もっと成熟したジェントルな味付けがされていた。

“駆け抜ける歓び”を標榜するBMWが、実用性を重視するあまり運転の楽しくないクルマを作っては元も子もない、ということなど開発陣は言われなくても誰よりもわかっているのだろう。FF化されても、BMWはBMWなのだ。
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文/藤野太一 写真/柳田由人 編集/iconic