カレラに乗ると911の凄さがよくわかる

3リッター水平対向ターボエンジンは、ターボチャージャーの音でそれとわかるが、まるで自然吸気エンジンのようにスムースに吹け上がる。GPFの影響なのか音は思っていたよりも静かだ。道中で、スポーツエグゾーストをオンにしてみる。4000回転を超えたあたりから気持ちのよいサウンドを奏でる。試乗車のすべてにこのオプションを装着していたことに合点がいった。
そしてタイプ992からトランスミッションはMTではなく、8速PDKが標準になった。ノーマルモードでは効率を求め、早いタイミングでリズムよくシフトアップしていく。Sportモードではシフトスピードを高め、高回転域を維持しながら走る。先出のマーケティング担当者にMTの設定はないのか尋ねると、そう遠くないタイミングでMTも導入すると教えてくれた。速さや効率を求めればもはやMTは、ATに勝てない時代になってきた。それでもあえてMTを用意するのは、速さだけがスポーツカーの価値ではないとポルシェは知っているからに違いない。ステアリングのギア比は先代から11%高められておりドライバー入力に対して素直に反応する。アルミの比率を7割にまで高めた高剛性ボディや、フロントトレッドの拡大によってスポーツカーとしての性能を高めたのはもちろん、スタビリティも大幅に向上し、グランドツアラーとしての能力にも磨きがかかっている。
カレラ 4 カブリオレにも少し試乗することができた。ソフトトップの骨組みはマグネシウム合金製で、リアウインドウはガラス製。高速走行時には静粛性高く、まったくバタつくことはない。50km/hまでなら走行中の開閉も可能だ。新技術の油圧システムを採用したことにより、所要時間は約12秒にまで短縮されている。オープンカーといえば、ボディ剛性の劣化が懸念されるところだが、アウトバーンやドイツ郊外の制限速度100km/hのワインディングを流したくらいではびくともしない。欧米ではクーペとカブリオレの割合が5:5にもなるのだという。サーキット走行をするなら話は別だろうが、日本ではわずか1割しかいないというカブリオレオーナーになるという選択も大いにありだ。また4WDは明らかにフロントの接地感が高く安定感が増す。だからといって曲がりにくいという印象もない。相対的にみれば、2WDのほうがすっきりと切れ味鋭く曲がるが、「どちらがいいのか」と問われば、「どちらもいい」というほかない。個人的には2WDを選ぶ。
いつの時代もそうだけれど、カレラに乗ると911の凄さがよくわかる。これがあるから、カレラ Sも、いずれ登場するであろうターボもGTSもGT3も成立するのだ。最新が最良であることは911にとって義務であり、その進化の歩みが止まることはないのだ。