公道での速度域に最適化された運動性能
排気ガス規制に対応したことの代償として、最新型は従来モデルに比べて最高出力は2PSダウンの24PS、最大トルクも1Nm低くなり28Nmとなっている。とはいえ、SRシリーズとしての魅力は色褪せることはない。街中で常用する2000?4000rpmの回転域でのトルクはむしろ向上し、排気音もその回転域で歯切れがよくなるようにチューニングが施されているのだ。

そして、SRシリーズが長年に渡って支持されている理由も、この公道で多用される速度域での面白さにある。単気筒エンジンの鼓動感は、街中をゆっくり走っていても「自分はSRに乗っている」という実感をライダーに伝えてくる。そして、軽快なハンドリングは街中の交差点を曲がるだけでも”楽しい”と感じられるものだ。特に、シートのやや後ろ寄りに座り、リアタイヤに荷重がかかる”バイクの基本”的な乗り方をすると、その魅力をより感じることができる。




最新のスポーツモデルは、200km/h以上の最高速度を誇り、100km/hオーバーのコーナーリングも難なくこなすマシンも少なくないが、公道で乗っている限り、その性能を出し切れるシチュエーションは皆無と言っていい。「SR400」には、そこまでの”速さ”はないが、その代わりに公道での速度域にフォーカスした運動性能で、その楽しさを満喫できる。
そして、慣れてくると、その限界性能が予想以上に高いところにあることがわかってくるのだ。これこそが、40年以上の長きに渡りSRシリーズが多くのライダーに支持される理由であり、ベテランライダーにもファンが多い要因なのだと実感することができた。もし、SRの魅力をまだ味わったことがないのなら、一度は乗ってみるべきだろう。バイクに乗っているのに、このマシンの魅力を知らないままというのはもったいない。
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取材・文/増谷茂樹