ひとり旅の味方、絶品の鉄板焼きを堪能
夕食は”ステーキハウス オリンエタル”にした。以前の本連載でも取り上げたが、鉄板焼きはひとり旅にお勧めのディナー。というのも、シェフとの距離が近く、ひとりでも十分楽しいから。
それは寿司屋も同じなのだが、寿司職人は寡黙な人が多いのかあまり会話できなかったりすることも。しかし、鉄板焼きのシェフは総じて陽気なかたが多く、エンタメとしても堪能できるというのが持論だ。

メニューは大まかに決まっているが、その日の仕入れ次第。ついてくれたシェフによっても変わることがあるという。こういうハプニング性があるのもおもしろい。シャンパンを飲み、ノドを潤す。

早速、地のものが登場。淡路島の由良の赤ウニに神戸ビーフのリブロースのたたき、トマトにからすみ、そしてマリーゴールドの花。黒いツブツブはキャビアだ。最初の一品から情報量が多い。ただし決して散漫ではなく、素晴らしいまとまり。シェフ・鍬先章太氏のホスピタリティの表れだろう。
シェフは恰幅がよく、いかにもうまいものを作ってくれる容貌ではないか。そのあふれ出るサービス精神をこのひと皿で受け止めた。「今日はこの人に最後までついていこう」そんな風に思わせる魅力を持っている。


淡路のヒラメとフォアグラのを油だけでフランベしたものには、台湾で漢方の雲南百薬の異名もある陸ワカメを。泉州の玉ねぎの酢漬けは口の中がサッパリする。泉州って、水なすのイメージが強いが玉ねぎもうまい。日本の玉ねぎ栽培発祥の地だとか。


さて、淡路から届いた伊勢海老と近海のタコがやってきた。鰹と昆布の出汁でじっくりと蒸す。こんなの絶対うまい決まっている。サーブする皿にはまだ青々とした温州みかんを切ったものをこすりつけて香りを付けるという芸の細かさ。ソースはガスパチョ風仕立て。海老のうま味の凝縮感がたまらない。