実際に走らせてみると


開けやすくなったディヘドラルドア(上に跳ね上がる)から中へともぐり込む。室内は従来シリーズより開放的で、パッセンジャーシートとの距離も十分だ。何よりモダンブリティッシュラグジュアリィに共通するシンプルで見映え質感の高いインテリアが、従来のモデルとのキャラクターの違いを強くアピールした。アルカンタラよりもオールレザー内装がよく似合う。
V8エンジンがけっこう静かに目を覚ました。ドアを締めると密閉感が半端ない。
もとより乗り心地に優れたスーパーカーとしてマクラーレンは有名だ。否、マクラーレンがスーパーカー界の乗り心地に改革をもたらした、と言ってもいい。GTではさらに洗練された乗り心地を手に入れている。

720Sと同様に、ハンドリングとパワートレーンのキャラクターをそれぞれ変えることのできるダイヤルがあり、起動(アクティヴ)にすれば、コンフォート、スポーツ、トラック(サーキット)のなかから好みのモードを各々選ぶことができる。まずはいずれもコンフォートモードを選んで走り出す。
V8ツインターボエンジンが低回転域から扱いやすい大トルクをスムースに生み出した。より軽やかなステアリングパワーと、コントロールしやすいブレーキタッチ、そしてショックのない変速のおかげで、国際試乗会の開催されたサントロペの街中を抜ける間の快適性は、まるで英国製スポーツサルーンのようだ。カーボンモノコックボディに特有の低周波振動はきれいに取り除かれており、まるでスポーツタイプのベントレーでも転がしているかのような乗り心地をみせた。

もちろんコンフォートなだけではない。モードをスポーツに換えれば、適度にラウドなサウンドを奏ではじめ、これまでのマクラーレンモデルと同様に敏捷かつ極めて正確なハンドリングパフォーマンスをみせた。これならサーキットで転がしても十分楽しめそう。
硬軟織り交ぜ上質な新時代のミドシップスーパーカーが誕生した。
文/西川 淳 写真/マクラーレン オートモーティブ 編集/iconic