実用域での扱いやすさ

豪華なGTにおいてもそこは同じだ。新たにモノセルⅡ?T(Tはツーリングの頭文字)と呼ばれる専用デザインのCFRPモノコックボディが与えられている。サイドシルを低めて乗降性を高めたのみならず、リア側にCFRP製のブリッジ構造を新たに設けたことで、大型の電動ガラスハッチゲートを装備できるようにした。モノセルⅡ?Tの重量は87.1kgで、うち上部ブリッジ構造に費やした(=重量増)のはわずかに13.1kgである。つまり、大柄だがさほど重くはないということ。
エンジンも720Sと同じ4L V8ツインターボを積んでいる。快適GT仕様とするために、720Sよりも小型で低慣性なターボチャージャーを装備。ピークパワーを狙わない代わりに、実用域におけるトルク性能を太く扱いやすくした。組み合わされる7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の他、シャシー系電子制御やパワーステアリングなども最新式のシステムだが、コンフォート性をより考慮するべく専用のセッティングを施したという。


最大の特徴はエンジンコンパートメントの上に420Lものラゲッジスペースを確保したこと。フロントブートと併せて570Lというラゲッジ容量は、数字上の話とはいえこの手のミドシップスーパーカーには異例のものだ。しかもリアゲートの下には小さめのゴルフバッグが何とか収まる。道具と着替えを持ってゴルフ場に行けるスーパーカー、である。
マクラーレンはエンジンの搭載位置を変えることなく補機類や吸排気系のデザインを変えることで、このスペースを稼いだ。もちろん、荷物がエンジンの熱によって不必要に熱せられないよう素材選びや空冷対策にもぬかりはない。