日々の暮らしにアートがあることで、生活に彩りが加わったり、気持ちが豊かになったりする。アートは、価格ではなく、それをどう感じるかが大事。白洲信哉さんに骨董の愉しみ方を取材した。
骨董は日常生活の道具、使って愛でる愉しみ方もある

当時の人々の息づかいが感じられるような、素朴ながらも美しい古陶磁や仏教美術品の数々に囲まれた静かな空間。「身近に置いて、心安らぐものを季節感を考慮して並べています。心惹かれる美しいもの、楽しいものを愛でる心は、ジャンルや時代に囚われることがありません」と白洲さん。
朝鮮や日本の古陶磁を中心に、木工、絵画、仏教美術から近現代美術まで、幅広いコレクションが並ぶ。「骨董とはいっても、もともとは日々の生活に寄り添ってきた道具たちですから、やはり使って愉しむことが醍醐味です。なかでも、身近に置いて愛でたくなるのは酒の器ですね。美術館でいくつもの器を見ることと、実際に体感することとは、やはり別ですから」
気のおけない仲間たちを自宅に招いての食事会では、コレクションを使って酒を酌み交わすこともしばしば。「作品のストーリーを知っていただきながら、手に拾いあげて間近で見た時、目に映った器に、どこか親しみを覚えるはずです。唇に触れた瞬間、自然と笑みがこぼれ、飲み慣れたはずの酒が、いつもと違った味に変わっていくのを感じていただけると思います」