素朴だけれど上質な、肌に馴染むクルマ

インテリアについても、低反発ウレタンによるシートの、適度な包み込み感が心地いい。自然な質感のシート生地がダッシュボードにも張られ、キチンとコーディネイトされている様子は視覚的にも心地よく、落ち着いた時間を過ごせる環境といえる。加えて車内インターフェイスも今ドキで、7インチのタッチスクリーンにUSBコードの有線接続でスマホを連携させれば、音声認識を含むいつものスマホの機能が使える。無線接続よりも直観的で分かりやすく確実でもある。加えてQi規格のワイヤレス充電も備え、同乗者のスマホも置くだけでチャージしてくれる。


また、リアシートは3座独立形状で、大人も短時間なら苦しくない中央シートとなっており、荷物がかさばるときは6/4分割の可倒式なのでモジュラー性も高い。パノラミックルーフを選べば、それこそ開放的なラウンジにも似たルーミーさが味わえる。

1.2Lターボと6速ATによる走りの印象は、穏やかかつスムーズで、速さはないが快活だ。前方衝突リスクを減らすアクティブセーフティブレーキが備わる以外、いわゆる運転支援機能はほぼ警告音にとどまるが、介入で運転のペースを乱されないメリットはある。ハッチバック版のC3やプジョー208と共通のプラットフォーム1は、旧いといえば旧いが完熟シャシーぶりはさすが。コーナーでは切り始めにやや大きめに揺らぐが、操舵感覚がナチュラルで接地感のあるロールなので、安心感の高いハンドリングとなっている。多少の凸凹を含む荒れた路面でも、足がよく動いて終始フラットでしなやかな乗り心地に終始する辺りが、やはりシトロエンだ。



輸入車慣れしていても剛性感とパワーこそが「いいクルマ」という人には、「柔らかく、しなやか」だからいいクルマ、という感覚は薄いかもしれない。だが昔からよくいわれるフランス車の、シンプルだからこその滋味深さを、今日的なカタチで巧みにまとめ上げたベーシックな一台が、C3エアクロスであり、クルマなのに服が肌に馴染むような身体感覚を味わえるクルマは、滅多にはないのだ。
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文/南陽一浩 写真/柳田由人 編集/iconic