京都人のおかまいとは?
「なんにもおかまいできしませんけど」の意味をより深く知るために、京都人の気質を少し紹介してみたい。
京都の文化や生活習慣を数多く残した、随筆家・大村しげは、著書『京暮し』(暮しの手帖社)で次のように書いている。
「京都のように古い町では、人もまた代々そこに住みついているので、いつまでも仲良う近所づきあいをしていくためには、お互いに借り貸しのない暮らしをするのが一番である。まあ侵さず侵されずということやろうか」。

また、同著では、家の前の掃除を例に京都の人づきあいを解説。その内容を要約すると、自分の家の前を掃き掃除する際、お隣、お向かいとの境は、ほんのわずかに越境して掃除をするにとどめ、それ以上はしない。隣家にこちらの家の前まで掃除してもらうと、同じようにしてお礼の気持ちを表さなくてはならなくなるから、といった趣旨である。
「毎度毎度そんなことに両方が気をつこうていたのでは、しまいにくたびれてしまう。そやから、ご互いに、人さんのことまではかまわずに、自分の家のことだけをちゃんとする」。
「こういう京都の暮らしぶりは、見ようによっては冷たそうでも、ほんまはお互いに人さんのことをだいじにしているのである」。
(ともに『京暮し』より)

suki1038に滞在して感じたのは、先述の「侵さず、侵されず」といった絶妙な京都の間合い。滞在中は何一つ干渉されないけれど、随所から気遣いが伝わってくる。
