高速道路では味わえないこと

そんな能登半島へと出掛ける際にテストドライブを兼ねて、自動車メーカーの広報車を借りて行く。道のりは基本すべて下道で、途中、季節によって有料トンネルを利用したり、しなかったりする程度。地図を眺めるとよくわかるのだが、東京から能登までは、ほぼ直線で結べるルートがある。国道20号線を走って、乗鞍高原と上高地の間を通り抜けて、富山まで斜めに突っ切り、能登半島へと抜けるルートだ。ナビで目的地までの案内をしてもらうと、関越道から上信越道、そして北陸道へと抜ける高速道路を利用するルートを提案される。下道だと約500kmなのに対して、高速道路を利用すると約700kmの行程になり、所要時間は高速道路利用のほうが掛からないとは言われても、その差は大きくないし、途中、長野県内に立ち寄りたいお気に入りスーパーがあったりするので、断然下道を走っていく。

今回、借りたのはMINI ONE 3DOOR VICTORIAという特別仕様車。昨年5月のマイナーチェンジのすぐ後にデビューしたモデルでこの3ドアのほか、5ドアも用意されている。その設えは、フェンダーにタータンチェックをモチーフにしたサイドスカットルのほか、LEDヘッドランプ、専用15インチアルミホイールなどで、ちょっと着飾った仕様となっている。

そういえば、MINIにはクーパーという企業名に由来するグレード名があり、車名そのものを”MINIクーパー”と勘違いしている人が、日本には多い。実は、先代MINIクーパーSクラブマンに乗っている友人も、指摘するまでMINIクーパーまでが車名だと思い込んでいたほど。さらにツートーンカラーがMINIのカラーだと思い込んでいる方も多いが、これは、クーパー以上で標準とされる日本のみのコンビネーションであり、海外ではモノトーンが基本(ツートーンはオプション扱い)。ちなみにグレードはパワースペックの違いから、ONE、クーパー、そしてクーパーSの3つを展開し、ハイパフォーマンスモデルとしてジョンクーパーワークスが特別な扱いとして存在する。
この中で、僕はONEがいちばん好きだ。MINIというと、どうしてもゴーカートライクとか、俊敏性が、といったスポーティさが語られ、グレードが上がって行くほど(車両本体価格が上がって行くほど)、それが強くなる。実際、クーパーSあたりは、ハンドリングの愉しさは最高だし、すごくいいとも思う。しかし、ベースとなるONEであっても、MINIらしさである操る愉しさに変わりはないし、むしろ、速く走らなくてもいい、というゆとりがある。下道をのんびりと走って行く者には、その加減がとても心地いい。何よりもルーフカラーもボディ同色を基本とするため、つまりモノトーンとなるため、ツートーンだらけの日本のMINIの中で、自分だけのMINIという特別感を味わえる。