イタリアのクラシコブランドも担当されていますね
「2001年、子会社が運営していたイタリアのクラシコブランドが三陽商会に移籍することになりました。それは偶然にも松屋銀座のバイヤーにサンプルを見せてもらったブランドだったんですね。移籍から数年経ち、そのクラシコブランドも、私が三陽山長と並行して担当をすることに。英国ブランドでトラッドを学び、クラシコイタリアを見て自分のスタイルが変わりました」

次なる転機はいつ訪れましたか?
「2015年秋に三陽山長のトータル化にチャレンジしています。なにか三陽商会らしいプロジェクトを、との思いから、靴を軸にスタイリングをするクラフツマンシップを感じられるブランドにしたいと考えていました。情熱のあるものづくりを目指したけれど、志半ばでプロジェクトが終わってしまい、完全燃焼できなかった。メディアの方にブランドの魅力やショップの情報を十分に伝えられていなかったように思います」
「しかし、当社の物づくりの歴史の蓄積を生かした新ブランドをいま進めています。クラフツマンシップとデジタルをうまく使いつつ、三陽商会らしさもある。それが今秋スタートするストーリー アンド ザ スタディーです。パーソナルオーダースーツブランドで、雑貨やシャツなどは既製品のセレクトも行います」

ストーリー アンド ザ スタディーの特徴は?
「メンズのオーダーはブリティッシュ、イタリア、トラッド、コンテンポラリーの4スタイルから選べます。三陽商会に世界中のブランドを経験したノウハウがあるからこそ、幅広いスタイルに対応できるんです。また、自社内に優れたパタンナーがいるのも強み。採寸や体型診断はタブレットでの撮影、アバターを活用。しかし、デジタルに頼り過ぎてはいけません。生産を行うサンヨー・インダストリー(福島県にある子会社)、ショップスタッフなど人を大事にしたいんです。良質な製品を発信しながら、共感してもらえるキーワードやモノづくりを目指します。また、スーツを愛する人たちのためのコミュニティを作りたいですね」
新ブランド、ストーリー アンド ザ スタディーについて
2019年9月6日から展開の始まるストーリー アンド ザ スタディー。70年を越えるものづくりの技術に最先端のデジタルテクノロジーを融合させ、体型に合わせた最適な着心地と理想のシルエットを実現するオーダースーツブランド。メンズとレディスを展開する。2019年9月6日、銀座8丁目にオープンする『GINZA TIMELESS 8(ギンザ・タイムレス・エイト)』の6階にショップを構え、2着目以降はデータをもとにECでの注文が可能となる。スーツの価格は4万9000円〜(税抜き)。
https://www.story-study.com/
野球に打ち込んだ青年がファッション企業に出会い、持ち前の精神力でさまざまな分野に挑戦してきた話を聞くと、こちらも応援したくなってしまう。新ブランドで猿渡さんの豊富な経験と知識が、どんなふうに反映されるのか、今秋の登場が楽しみだ。
コラム:猿渡さんをファッションチェック!
撮影/小澤達也(Studio Mug) 取材・文/川田剛史