男が求める夢は外の世界にのみあるわけではない。居場所の自邸でこそ味わえる特別な時がある。自身のこだわりを惜しむことなく注いだ夢の空間。そんな場所を持つ男たちに、その実現の極意を聞いた。
Den【書斎】

フランス文学者 鹿島 茂さん
1949年横浜生まれ。1973年東京大学仏文学科卒業。1978年同大大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。仏文学者、評論家、エッセイスト、明治大学国際日本学部教授。専門は19世紀フランスの社会、小説。
自分だけの夢の空間をつくるコツ
(その1)古いものと新しいものをまぜながらテイストはブレさせない
(その2)増え続けるコレクションは美しく”見せる”収納を考える
(その3)リラックスできる椅子かソファを置いておく

仏アンティークを中心に味のある空間にまとめた書斎
鹿島 茂さんのプロフィールを見ると、我々とは異なる世界に住む人だと思ってしまう。著書『病膏肓に入る−鹿島茂の何でもコレクション』(生活の友社)を読むと、その思いは消え失せるだろう。
洒落者が靴やタイ、カフリンクスに夢中になるように、鹿島さんはフランスを中心とした古いものを蒐集してしまうのだ。「初めて書斎を持てたのは大学1年の頃。壁一面に自分で設計した本棚を配して、そこが自分で買った本で徐々に埋まっていくのが快感でした」。服好きでいうクロゼットのようなものだろうか。
「この机は20世紀初頭のイギリスのもの」。天板にはレザーが貼られ、その縁には凝った細工が施されている。椅子も古い英国製だ。
「平日、休日関係なく本を読んでいます。本を読むには多少のリラックスが大事で、そのためにソファが欠かせません」。クラシックな書斎の雰囲気にあったビロード張りソファもアンティークかと思いきや、「伊勢丹で買いました」と鹿島さん。「ランプは1920〜30年代のアールデコを模したアンティーク。電球がフランス規格のものだから切らすと手に入れにくく大変なんです」。新旧織りまぜながらもテイストはブレない。書斎作りのヒントと言えよう。
「僕は書斎がないと困ります。誰にも迷惑をかけず、独りの世界に集中できる空間が必要なのです」。独り集中できる何か、靴磨きでもシガーでも何でもいい。それを見つけることが書斎作りの第一歩なのかもしれない。