宗次クラシック音楽に出合ったのもその頃です。ろうそくから電球の生活になって、友達から中古のテープレコーダーを買って、養母が譲り受けたテレビがあったので音楽を録音しようと思ったんですが、当時音楽番組は「N響アワー」くらいしかなくて、そこから流れてきたメンデルスゾーンのバイオリンコンチェルトに胸を打たれて、岩城宏之さんという素晴らしい指揮者が一気に好きになってしまって。そういうわけなので、先ほどお話しした友達がいないというのは2番目の自慢で、一番の自慢は幼少期の苦労ですね(笑)。
加藤自慢と言えてしまう宗次さんが素晴らしいと思います。
宗次ここまでの人生は全て成り行きです。身を任せて、その時々を一生懸命にやることで、こんな私でもなんとか経営者になれました。ちなみに「起業したい」という人には基本的に「いい加減な自信だけでやるなら、家族も含めて不幸になるからやめなさい」と忠告しているんです。それでもやりたいと言う人には「思った通りになんてならないから、先のことは考えないこと。パンの耳を食べながら、お客様への感謝と真心を忘れないでいれば、だんだんうまくいくようになるから」と。
加藤宗次さんのような無欲の経営者は、他にはなかなか見当たらない気がします。
宗次私が申し上げるのもおこがましいんですが、成功された他の経営者の方々にはもっと「助け合い」をやってほしいなと。自分のためだけでなく、チャリティでも寄付でも、人のためにお金を使う経営者が増えてほしい。今の時代は奨学金でも「こども食堂」でも、アーティストが何かを発表するにも、大体がお金で困っています。
加藤最後に明日の目標があれば、教えてください。
宗次名古屋の宗次ホールに関してはまさに今日の延長が明日の目標。あと、東京・仙川にある桐朋学園に隈 研吾先生設計の新たな宗次ホールができます。これはお金だけを出して運営はしないんですが、少しでも音楽に貢献できるのはうれしいことです。
加藤心が洗われるお話をありがとうございました。名古屋に行く際は花壇を見に行きます!
カトMEMO
- 無欲こそが心の豊かさと余裕を生む
- 一生懸命な姿を見せるリーダーには自然と下がついてくる
- お客様に喜んでもらいたいという純粋なサービス精神、誠実な姿勢は人の気持ちを動かす
- 自らが背負うマイナスポイントも悲観的にならず、自慢といえる格好良さ
スペシャルフォトギャラリー
[MEN’S EX 2019年7・8月号の記事を再構成]
撮影/前 康輔 スタイリング/後藤仁子 ヘアメイク/金子友美 文/岡田有加(edit81)